関西石ころ旅。京都府木津川市の木津川で採れた転石の紹介です。
全体的に黒い岩石です。上写真で、一定の方向に黒い模様が入っているのが分かるでしょうか。これは軽石が熱で溶けて引き延ばされながら急冷してできたものです(「本質レンズ」、モノとしては黒曜石と同じ)。これは溶結凝灰岩のよく知られた特徴です。異質岩片として目立つものはありませんでした。
上写真で白く見えるのは斜長石、くすんだ色に見えるのは石英です。石英、長石の多さと、黒雲母がわずかにあることから、流紋岩質と考えられます。自信はありませんが、輝石とおぼしき斑晶も少し見られました。この斑晶の多さは、以前紹介した流紋岩質溶結凝灰岩とは対照的です。本質レンズにも斑晶が埋まっています。写真では分かりませんが、1mm以下のキラキラした(劈開がある)白っぽい鉱物があり、詳細不明です。
割った断面です。基質が黒いガラス質であることが認められます。それだけ急冷したということです。
地質図を見ると、木津川からその支流である名張川をさかのぼれば新生代新第三紀中新世の「流紋岩・デイサイト質大規模火砕流」なる地質をもつ地域があります。今回の石ころはおそらく、ここから採集地まで転がってきたのではないでしょうか。名張の地質図幅解説によれば、曽爾累層上部を構成する「室生火砕流堆積物」として紹介されており、なんと層厚400mになる箇所もあるという。岩相は次のように書かれています。
本火砕流堆積物は、黒色ガラス質の溶結した火山礫凝灰岩からなる下部と脱ガラス化作用を受けた白-灰色の溶結火山礫凝灰岩から成る上部に区分できる。
採集しませんでしたが、実は灰色の溶結凝灰岩も同じ場所で見つけていました。それが「上部」由来であり、逆に今回紹介したのは室生火砕流堆積物の「下部」に由来するものでしょう。また
火砕流堆積物の本質物は斜方輝石黒雲母流紋岩で、斑晶として斜長石・石英・サニディン・黒雲母・斜方輝石を含むほか、ごく稀にざくろ石が認められる。本質物の岩質に、上部と下部で特に違いは認められなかった。
ということで、先ほどの肉眼による観察結果と主な鉱物が一致しています。さらに、下部に関して
多くの露頭では長径10cm以下の本質レンズと石英(径4mm以下)・黒雲母(径2mm以下)の目立つガラス質基質で構成され、稀に長径20cm以上の本質レンズが濃集する場合がある。異質岩片は径1cm以下のものがまばらに含まれる程度である。
と書かれています。
本質レンズにはデイサイト質と流紋岩質のものがあるようです(佐藤ほか,2012:論文中に写真あり)。今回のものは流紋岩質っぽいです。
ほか、石ころ記事:
辻野匠. "さわれる岩石 凝灰岩と溶結凝灰岩". 2023/11/28アクセス
"崎浦溶結凝灰岩" .ふくいジオスポット. 2023/11/28アクセス
西岡・尾崎・山元・川辺. "名張地域の地質" 産総研. (1998). 2023/11/27アクセス
佐藤・中条・和田・鈴木. "中新世の室生火砕流堆積物"日本地質学会第119年学術大会2012年大阪巡検案内書(2012)
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