$\mathfrak{R}\a,\mathfrak{R}\b>0$ とする。$$B(\a,\b)=-\frac{e^{-\pi i(\a+\b)}}{4\sin\pi\a\sin\pi\b}\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt$$ただし経路 $P$ はポッホハマー積分路(下図)。
ベータ関数
\begin{equation}B(x,y)=\int^1_0t^{x-1}(1-t)^{y-1}dt\quad(\mathfrak{R}x,\mathfrak{R}y>0)\tag{1}\end{equation}
そもそもベータ関数ってどういうものなの?という方はこちらをご覧ください:
ガンマ関数とハンケル積分路
本記事の流れは、ガンマ関数のハンケル表示を導出する方法と非常によく似ています。ハンケル表示のほうが簡単なので、先に読んでおいてもいいかもしれません:
偏角の変化
\begin{equation}\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt\tag{2}\end{equation}なる積分を考えます。ただし積分路は下図。
まず原点から実軸に沿って進み、点1のまわりで小さな円を正方向に描きます。また実軸に沿って原点にいき、そのまわりで小さな円を正方向に描きます。さらにまた点1へ行き、小さな円を負方向に描き、原点へ戻ってまた負方向に円を描いて終わりです。
被積分関数で注意すべきは $t$ と $1-t$ の偏角です。ともに $0$ から $2\pi$ までとします。$t$ の偏角は図を見ればすぐに分かります。$1-t$ の偏角はベクトル $\vec{t1}$ の向きを考えるようにしてください。
- スタート地点から1までは $\arg t=\arg(1-t)=0$
- $1$ を回る間、$\arg t=0$ で $\arg(1-t)$ は $0$ から $2\pi$ へ変化する。
- 0へ向かう間、$\arg t=0$ , $\arg(1-t)=2\pi$
- 0を回る間、$\arg t$ は $0$ から $2\pi$ へ変化する。その間 $\arg(1-t)=2\pi$
- 1へ向かう間、$\arg t=\arg(1-t)=2\pi$
- 1を回る間、$\arg t=2\pi$ で $\arg(1-t)$ は $2\pi$ から $0$ へ変化する。
- 0へ向かう間、$\arg t=2\pi$ , $\arg(1-t)=0$
- 0を回る間、$\arg t$ は $2\pi$ から $0$ へ変化する。その間 $\arg(1-t)=0$
変数変換
上記の番号に対応する置換は以下のようになります。$\epsilon>0$ は小さな数とします。
- $t\to t$ , $1-t\to1-t$
- $t=1$ (正確には$1-\epsilon e^{i\t}$) , $1-t=\epsilon e^{i\t}$ で $\t$ は $0\to2\pi$ と変化
- $t\to t$ , $1-t\to(1-t)e^{2\pi i}$
- 省略
- $t\to te^{2\pi i}$ , $1-t\to(1-t)e^{2\pi i}$
- 省略
- $t\to te^{2\pi i}$ , $1-t\to1-t$
- 省略
「省略」としたのは、②と似たようなものだからであることと、②④⑥⑧の積分はゼロとなるというのが理由です。以上のように置けば、置換した後の $t$ の偏角はすべて $0$ です。
円弧の積分
②の経路に関しては\begin{eqnarray*}\left|\int_0^{2\pi}(1-\epsilon e^{i\t})^{\a-1}(\epsilon e^{i\t})^{\b-1}(-i\epsilon e^{i\t})d\t\right|&\le&\epsilon^{\mathfrak{R}\b}\int_0^{2\pi}\left|(1-\epsilon e^{i\t})^{\a-1}\right|d\t\\&&\xrightarrow[\epsilon\to0]{}0\end{eqnarray*}④⑥⑧も同様です。
よって①③⑤⑦を考えればいいですね。\begin{eqnarray*}&&\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt\\&=&\int_0^1t^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt-\int_0^1t^{\a-1}(1-t)^{\b-1}e^{2\pi i\b}dt\\&&+\int_0^1t^{\a-1}e^{2\pi i\a}(1-t)^{\b-1}e^{2\pi i\b}dt-\int_0^1t^{\a-1}e^{2\pi i\a}(1-t)^{\b-1}dt\\&=&(1-e^{2\pi i\a})(1-e^{2\pi i\b})\int_0^1t^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt\\&=&(e^{2\pi i\a}-1)(e^{2\pi i\b}-1)B(\a,\b)\\&=&e^{\pi i(\a+\b)}(e^{\pi i\a}-e^{-\pi i\a})(e^{\pi i\b}-e^{-\pi i\b})B(\a,\b)\\&=&-4e^{\pi i(\a+\b)}\sin\pi\a\sin\pi\b B(\a,\b)\end{eqnarray*}
以上から次の結論を得ます。
$$B(\a,\b)=-\frac{e^{-\pi i(\a+\b)}}{4\sin\pi\a\sin\pi\b}\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt$$
$\a,\b\in\ZZ$ では先ほどの途中式$$\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt=(e^{2\pi i\a}-1)(e^{2\pi i\b}-1)B(\a,\b)$$を見ると右辺は明らかに $0$。左辺の積分は $\a,\b\in\ZZ$ では先ほどの偏角の操作は不要で、積分路は完全に相殺されて値 $0$ となります。
Whittaker-Watsonを参考にして導出しましたが、もう少しじっくり考えたいところです。偏角の操作をしたところでは、ちゃんと変数変換して同じ結果になるかどうかを確認しないと、自分としても完全に理解できたことにはならないだろうなあと。
古いですが有名な書物で、どんどん改訂版が出ています。前半は解析学一般、後半は特殊関数という内容で、網羅的に勉強できます。演習問題に解答がないのが昔ながらのものって感じ。2022/11/6現在、最新版は5th Editionで私も所有していますが、廉価な3rdとかでも十分かと。
A Course of Modern Analysis: fifth Edition
A Course of Modern Analysis: Third Edition
あと納得できていないのは、$$\oint_Pt^{\a-1}(1-t)^{\b-1}dt$$は $0$ と $1$ を分岐点にもつので、実軸の $0$ と $1$ の間に切断を入れて考えねばなりません。しかしポッホハマー積分路では切断をまたいでいるように見えます。これはOKなのでしょうか。私が複素解析の土台をしっかりと勉強できていないということでしょうね。少しモヤモヤしながら本記事を終えます。
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