和歌山県のある鉛鉱山について

南海鉱山についてです。

採集記

上富田町と田辺市の境目に富田川が流れています。そのあたり田辺市側に鮎川という地域があります。このあたりに南海鉱山というものがあり、方鉛鉱・閃亜鉛鉱・磁硫鉄鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱・方解石が出るらしい。道中に出会った地元の人に聞いてみると、昔に鉛をとっていたとのこと。でも鉱山がどこかは分からないとおっしゃってました。

鉱山跡や坑口を探すほど時間をかけるつもりはなかったので、適当に谷筋を当たってみることにしました。ボウズでもいいやという感覚です。地理院地図を見ると「鉛山」という地名が見えます(注意:白浜町湯崎の鉛山とは異なります)。そのあたりの谷筋を上っていって石がたくさん落ちているところで探しました。砂岩や泥岩が大量に落ちていますが、ちょいちょい汚い石が見られます。砂岩や泥岩に方解石脈が入っていて、あちこちが褐色に汚れているのです。この汚れは磁硫鉄鉱が風化したものです。

鉱山として稼働していたからには、大きな鉱脈がどこかにあるのでしょうが、鉱山の全体像が分からないのでどうにもなりません。私が見たのは本チャンの鉱脈からあちこちの岩盤に派生した小さな脈なのでしょう。方解石の脈と母岩の隙間を埋めるように主に閃亜鉛鉱、ときとして方鉛鉱が現れています。ということは母岩の裂け目にまず閃亜鉛鉱などが晶出して、あとで方解石脈が入ったということです。閃亜鉛鉱は黒々としていて、Fe成分が多いことが予想されます。方鉛鉱は直角の劈開と、色が若干明るいので分かります。

またこぶし大の磁硫鉄鉱・方鉛鉱の塊も見つけました。ずっしり重く、磁石につきます。本チャンの鉱脈から来たものでしょうか。磁硫鉄鉱は鉱石としてはあまり使われないので捨てられたかもしれません。磁硫鉄鉱が出るということは鉄が来ているわけですから閃亜鉛鉱の固溶体成分としてFeが多いのは自然なのかも。

調べたこと

いつも下調べが甘いので、毎度反省するのですが、今回も採集後に文献にあたりました。津田(1955)に詳しく書かれています。私が採集したところはまぁまぁ正しくて、鉱山と同じ谷の下流でした。

津田の調査は昭和26年に行われたようです。南海鉱山は砂岩泥岩互層中に胚胎された方鉛鉱-閃亜鉛鉱-方解石脈による裂罅充填鉱床で、少量の磁硫鉄鉱・黄鉄鉱・黄銅鉱をともなうとのこと。脈石は主として方解石で少量の石英をともなっており、母岩の変質はほぼないといいます。

近辺の3つの谷に旧坑があるうち、私が訪れたのは(たぶん)鉛山谷です。ここの記述が多いのでメインっぽいです。

サンプルの観察

砂岩中の方解石脈と母岩のすきまに水晶と閃亜鉛鉱をみとめました。泥質岩中には閃亜鉛鉱や方鉛鉱をみとめました。

また、1つ鉱石レベルの重さのものを拾って割ったところ磁石によくつく磁硫鉄鉱のかたまりでした。方鉛鉱・斑銅鉱・黄鉄鉱も共生していました。

磁硫鉄鉱の塊。上面は風化してできた褐鉄鉱
少し経つと表面が青く。斑銅鉱か。
方鉛鉱。うまく撮れない。

参考文献

津田 秀郎.1955.「和歌山県西牟婁郡南海鉱山の地質及び鉱床」『和歌山大学学芸学部紀要』(5):26-28.

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まめしば
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