前回の記事:
苫小牧から海岸沿いに襟裳方面に向かう「日高 石ころ旅」。国道235号をずっと走っていきます。海へ流出する川が途中にいくつもあり、石ころを探すことができます。特に様似町あたりは新鮮な橄欖岩がごろごろあり、「アポイ岳ジオパーク」としても知られています。山に入るのはヒグマが怖いので、川原や海辺の転石を探しました。
ジオパークへのリンクを置いておきます。現地を訪れる際にいい予習になるはずです。
地質図を見ると、三石川周辺は蛇紋岩・礫岩・変成斑レイ岩・苦鉄質片岩・泥岩・珪質泥岩・玄武岩(海洋)がありそうでした。少しだけ立ち寄りました。
まず目についたのは紫色の石ころです。これは果たして何なのか・・・。泥岩だろうと適当に判断してスルーしてしまったのですが、今になって非常に気になります。1つ持って帰るべきでした。
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砂質片麻岩
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緑色岩(海洋の玄武岩)
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三石川の上流あたりは付加体であり、海底由来の玄武岩があります。これがそうです。右側の石には緑色のガラス質のものがこびりついています。岩質的に、この部分は流紋岩でしょうか?
斑レイ岩
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斑レイ岩です。有色鉱物は角閃石、輝石が見られます。石英のかたまりもありますが、斑レイ岩体に花崗岩が貫入したのでしょうか。写真では分かりませんが、きらきら金色に輝く小さな粒があり、黄鉄鉱かもしれません。
石英塊
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カッターで傷がつかなかったので石英です。海苔のように黒いものが張り付いていますが、角閃石と輝石を認めました。
泥岩
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蛇紋岩
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橄欖岩が変質すると蛇紋岩となります。以前の記事の蛇紋岩より変質が弱く、風化もさほどしていないため、重くてがっしりしています。
川とかでもなく適当に散歩していて拾った石です。
片麻岩
黒雲母と角閃石が多く、同方向に配置して筋を作っています。白い大きな部分は貫入と思われます。やや縞模様となっていますが片理はありません。
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角閃岩
角閃岩は片麻岩と同様に変成岩の一種です。片麻岩との違いは、黒雲母のかわりに角閃石が多いということであり、塩基性岩が高温変成を受けたものです。下の写真2つは、上の片麻岩に比べて角閃石が多いため、「角閃岩」と判断しました。黒くて広いエリアは角閃石の集まりです。だたし、黒雲母もあるので片麻岩か角閃岩か迷いました。もしかするともともとは閃緑岩だったとも考えられ、その場合は「角閃石片麻岩」くらいの名前にとどめたほうがいいかもしれません。
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橄欖岩(かんらん岩)
アポイ岳ジオパーク周辺は橄欖岩があるのが当たり前の状況。そこらの住宅の庭には橄欖岩の砂利があり、その上に今朝とれた日高昆布が干されている…。現地の人いわく「かんらん岩が珍しいと言って訪れる人や、地質調査に来る人は多いが、子供のころからあまりに当たり前の石なので、私たちは(橄欖岩のことを)何とも思わない」そうです。そりゃそうですよね。
このあたりの橄欖岩はどれも似たような構成をしていて分かりやすいです。下の写真を見てください。全体的にくすんだ黄緑色をしていますが、これは橄欖石です。左上にある鮮やかなエメラルドグリーンは単斜輝石、あちこちにある少し大きい黒~暗緑色の斑点は斜方輝石。小さく真っ黒で光沢のある粒はクロムスピネルです。橄欖岩のなかでも「複輝石橄欖岩(レルゾライト)」といえるでしょう。
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次のように黒っぽいものもあります。少し蛇紋岩化したのか、あるいは橄欖石のなかの鉄が多いのでしょうか。表面は橄欖岩1と同じで黄緑色でした。
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下の橄欖岩6は輝石が非常に少なく、ほとんどが橄欖岩でできています。これを「ダン橄欖岩」あるいは「ダナイト」とよびます。
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蛇紋岩
このあたりの蛇紋岩も、以前紹介した京都大江山よりも変質が弱く、がっしりしています。磁石に少しくっつきます。
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黒地に暗緑色のものがべちゃっとなっているものが多いです。
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風化して褐色を呈するものもあります(下)。割ると中身は真っ黒でした。
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石英閃緑岩
閃緑岩に石英がふくまれるものです。石英、長石、黒雲母、角閃石が認められます。
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斑レイ岩
下の斑レイ岩1には橄欖石と輝石が認められます。小さく光る粒があり、黄鉄鉱でしょうか。
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日高地方は北海道の中でもあまり遊びに来る人が少ない印象です。でもご飯はとてもおいしいし、地質も面白い。馬牧場もたくさんあり、好きな人にはたまらないのではないでしょうか。
様似はかつてプレート同士が衝突して、片方のプレートがめくりあがり、地下深くから橄欖岩が姿を現した地域です。いろいろ散策して興味深い場所でした。
ほかの石ころ:
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![まめしば](https://mamekebi-science.com/wp-content/uploads/2022/01/cropped-IMG_9259-e1645361532797.png)
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