モホロビチッチ不連続面の深さを計算しよう

地学の実習。

地殻とマントルの境界をモホロビチッチ不連続面(モホ面)とよびます。人類が最も深く掘った穴はコラ半島にある深さ12km程度のもので、地殻を突破できていません。つまり人類はマントルに到達していないのです。

しかし、到達していなくても、いろいろな手がかりから地殻とは異なるものが深くにあることを人類はつきとめました。その手掛かりの1つが地震波の解析です。

今回は地震波の解析によりモホ面の深さを求めてみましょう。自動化するエクセルファイルもあります!

地震波のデータ

モホ面の深さを求める理論については山賀 [2]が詳しいです。走時曲線をプロットする方法です。

ということは実際の地震データを使って走時曲線をまずプロットせねばなりません。

1次資料としてはやはり気象庁のものとなります。岡本[3]にしたがってデータを探してみました。気象庁[4]を開き、「検測値」の一覧から好きな年月を選びます。ここでは2018年6月を例にします。ダウンロードできたら解凍してデータ見ることができます。イベントごとに横線で区切られています。どれか1つのイベントを選んで今回の実習データとします。

なるべく詳細にプロットできたほうがいいので、比較的大きな地震を選びます。また、本実習の理論は震源の深さをゼロと仮定するものなので、震源が浅い地震を選びます。下データでは震源深さは13kmです。

          2018Y  6M 18D  7H 58M 34.14S +/-0.03 KYOTO OSAKA BORDER REG   R=(5,184) MAXI=C
          LAT=34 50.66N +/-0.07 LONG=135 37.30E +/-0.09 DEPTH= 13KM +/-0.39 MAG1=6.1D MAG2=5.6W

データの最上部には年月日と時刻や緯度・経度、震源深さ、マグニチュードが書かれています。いま必要なのは発生時刻「7時58分34秒14」のみです。大きな地震ではそれに続いてCMT解などが書かれていますが使いません。

その下に走時曲線のもととなるデータがずらっと並びます。

STATION  PHA  TIME        RES   PHA  TIME     RES   N-S AMP    E-W AMP    U-D AMP          DELTA   AZM    MAG  MRES
DP.ABU   P    07 58 36.57  -0.0 S    58 38.30   0.0  3164  0.2  5210  0.1  2311  0.4           5.1 294.1          
N.KTNH   P    07 58 37.23   0.0 S    58 39.52   0.2  1947  0.1  2224  0.2 689.2  0.3          11.8 139.7          
N.KMMH   P    07 58 37.19  -0.1 S    58 39.30  -0.2  O.S.       3069  0.2  1338  0.2          12.9  62.3          
DP.MYO   P    07 58 37.94   0.1 S    58 40.68   0.3  4395  0.4  3758  0.0  1790  0.4          16.9 303.6          
N.OSKH   P    07 58 37.80  -0.1 S    58 40.33  -0.1  O.S.       O.S.       1054  0.1          17.0 213.2  

STATIONは観測地点です。略称の一覧はこちらで見られます。

PHAは位相で、「P」ならP波、「S」ならS波を示し、その右の「TIME」はその波が観測地点に到達した時刻をあらわします。本実習ではP波のみ扱いますので、「P」と書かれたデータとその時刻のみを使います。というのも、S波は遠方のデータがほぼなく、走時曲線をつくりにくいからです。

DELTAは震央距離です。データはこのDELTAで昇順ソートされているようです。

ほかにも項目がありますが、今は関係ありません。詳しくは気象庁[5]などをご覧ください。

走時曲線を描く

P波が到来した時刻と震央距離をプロットします。上で見たデータ1行目(DP.ABU=阿武山)は距離5.1kmで到達時刻は7時58分36秒57です。地震発生時刻は7時58分34秒14でしたから、到来にかかった時間は2.43秒となります。

2行目(N.KTNH=交野)は距離11.8km、到来にかかった時間は3.09秒です。

このようにデータを整理していき、横軸を震央距離[km]、縦軸を到来時刻[s]としたグラフを描きます。手作業でやると大変ですので、震央距離は500kmまでとし、震源の近辺(50km以内くらい)はデータが集まりすぎているので、適当に取捨選択して抜き出しても大丈夫です。

この作業を自動化するエクセルを作りました!こちらでダウンロードしてください。

できたグラフはこんな感じ。

深さの計算

グラフをつかってモホ面の深さを求めましょう。岡本[6]も見ていただくと分かりやすいです。

グラフは途中で微妙に折れています。折れるより左側、右側それぞれの回帰直線を引きます。

2本の直線がクロスするところが折れている場所です。このグラフでは、折れている震央距離は170kmです(この値を $d$ とします)。

折れるより左側と右側それぞれのP波の速さ $v_1$ , $v_2$ を計算します。だいたい、$$v_1=\frac{380-0}{60-2}=6.55\mathrm{km/s}\;,\; v_2=\frac{1230-430}{160-60}=8.00\mathrm{km/s}$$

モホ面の深さは$$x=\frac{d}{2}\sqrt{\frac{v_2-v_1}{v_2+v_1}}$$なので、$$x=27\:\mathrm{km}$$Hi-net[1] で答え合わせをしましょう。まぁ悪くない結果かと思います。

参考文献

[1] 日本列島下のモホロビチッチ不連続面深度構造. Hi-net高感度地震観測網. 2024/5/3 アクセス

[2] 山賀 進. 地球の構造(1). 山賀 進のWeb site. 2024/5/3アクセス

[3] 岡本 義雄. 走時曲線下図作成レシピ2021年版. 2024/5/3アクセス

[4] 気象庁. 地震月報カタログ篇 1.地震. 2024/5/3アクセス

[5] 気象庁. 地震月報カタログ篇 利用のてびき. 2024/5/3アクセス

[6] 岡本 義雄. 走時曲線下図を用いた解析実習 2021年版 その2. 2024/5/3アクセス

応援のおねがい

Please support me!

まめしば
まめしば

記事を気に入って下さった方、「応援してあげてもいいよ」という方がいらっしゃったら15円から可能なので支援していただければ幸いです。情報発信を継続していくため、サーバー維持費などに充てさせていただきます。

ご支援いただいた方は、こちらで確認できます。

Amazonギフトの場合、
Amazonギフト券- Eメールタイプ – Amazonベーシック
より、金額は空白欄に適当に(15円から)書きこんで下さい。受取人は「mamekebiamazonあっとgmail.com」です(あっとは@に置き換えてください)。贈り主は「匿名」等でOKです。全額がクリエイターに届きます。

OFUSEは登録不要で、100円から寄付できます。金額の90%がクリエイターに届きます。

OFUSEで応援を送る

codocは登録不要で、100円から寄付できます。金額の85%がクリエイターに届きます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA