秋田県の男鹿半島は、県の北部から日本海へ突き出した半島です。半島の根元には八郎潟があります。半島の西部には一ノ目潟をはじめとする爆裂火口(マール)が存在し、「男鹿目潟火山群」とよばれます。半島には流紋岩質・安山岩質・玄武岩質の溶岩が見られます。
男鹿半島西部には戸賀湾という場所があります。もともと火口であったところへ海水が入ってきてできた湾です。湾の形を見ると何となく火口っぽい雰囲気があります。湾の南端に「男鹿水族館GAO」があります。海岸すぐのところなので、周りに岩石がたくさん落ちています。ファミリーで賑わっているなか、石ころを探しました。
おおまかな周囲の状況はこんな感じです。赤みがかったデイサイト質の海岸です。
大口・鹿野・小林・佐藤・小笠原「男鹿半島の火山岩相:始新世~前期中新世火山岩と戸賀火山」ではこの層を「竜ヶ島デイサイト」とよんでおり、およそ3000万年前に形成された模様。その名よりも広い組成が認められ、安山岩や流紋岩もあるようです。
また、この海岸には下写真のように灰色の岩脈が突き出しています。
柱状節理がありますね。この岩脈に近づいてみましょう。下のように斑状組織が見られます。
この岩脈は安山岩質です。詳しいことは分かりませんでしたが、男鹿半島西部には多くの岩脈があって、花崗岩質のものから玄武岩質のものまでさまざまであり、これもその岩脈群の1つであろうとのことです(藤本ほか「地学教育の素材としての男鹿半島」)。
海岸を見渡すと石ころがたくさんあります。これらは露頭から離れてしまった転石ですので、どこから来たかは分かりませんが、産総研の地質図によってどんな石があるかは多少予想できます。このあたりは流紋岩・デイサイト質溶岩(竜ヶ島デイサイト)と玄武岩質溶岩(長楽寺玄武岩)の境目です。そして今の岩脈。ならば幅広い火成岩がとれそうな気がします。
いろいろな石がありましたが、採集袋を持っていないので、少しだけ持ち帰って観察しました。
デイサイト
まずはこの2つ。薄く赤みがかっているデイサイト質の岩石です。叩き割ったので形が悪いです。
左の方は縞々があります。下のように拡大すると石基は緻密で、ほとんど斑晶はありませんが、たまに中央にあるような鉱物が見られます。黒雲母の斑晶です。
側面を見てみましょう。デイサイトは粘り気のある溶岩由来で流理構造が見られることがあるので、この縞々がそうなのでしょうか。下のように断面から拡大すると、この縞は流理ではなく火山灰か何かの層にも見えます。
もう片方の岩石(写真1の右側)を見てみましょう。先ほどとは違い、手触りと、ぱっと見た感じは斑晶がほぼない普通の火山岩のようです。拡大すると・・・
石基の中に六角形の黒雲母の斑晶があります。ものすごく細かい針状の黒い鉱物も見えます。
ドレライト(粗粒玄武岩)
ドレライトは玄武岩の石基が少し大きいバージョンで、肉眼やルーペで粒が見えます。昔のカテゴリでいうと「半深成岩」ってやつです。下の写真を見てください。
これは全体的に緑色っぽい石基に、白い斜長石と黒い輝石の斑晶が見られます。有色鉱物が多く、玄武岩だと分かるのですが、石基をよく見ると細かい粒つぶが分かります(先ほどのデイサイトと比べてみてください)。なので「ドレライト」と判定しましょう。なおドレライトには、斑晶があまりないものもあります。
ひん岩
ひん岩はかつての「半深成岩」というカテゴリで安山岩質のものです。安山岩よりも斑晶が大きかったり、石基の粒が少し大きかったりします。写真を見てください。
灰色の石基に黒と白の大きい斑晶が見られます。白い斑晶は長石です。上部にかなり大きな白斑が分かりますね。拡大してみましょう。
石基はあまり緻密でなく、小粒の結晶で占められていることが分かります。さっきのドレライトもそうでしたが、さらにはっきりしています。左の大きな黒い鉱物は角閃石でしょう。その右のコロコロした黒い鉱物は単斜輝石(普通輝石)です。
1つ目のデイサイトに関しては、もう少し調べてみたいところです。
帰ってきて、後から男鹿半島の地質を調べると、ここ以外にも面白そうな採集場所がたくさんありそうだと感じました。遊びに行ったついで程度だったのが悔やまれます。一ノ目潟では橄欖岩がとれるそうで、興味はあったのですが、どうも普通には降りていけないような感じでした。何にせよ、下調べが重要ということです。
このあたり一帯は「男鹿半島・大潟ジオパーク」とよばれ、HPもあり、予習できます。ジオパーク学習センターが男鹿市役所の岩美庁舎にあり、訪れましたが見事に休館日でした(これも下調べしとくべきですね)。入館料は無料なので、地質ファンはぜひ立ち寄りたいですね。
わたしとしても、地質図幅の解説や、やさしめの論文を読んで再度訪問したいところです。
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