@karenonaharaさんのツイートを見て、取り組んでみました。
$$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^4\binom{2n}{n}}=\frac{17}{3240}\pi^4$$
分母に $n$ の4乗がありますが、本記事を読めばこれが $n^2$ , $n^3$ のときの値もすぐに分かります。また、超幾何関数での表示も見てみましょう。
こちらの記事のTheorem1あるいはこちらの記事からただちに次の公式を得ます。
$$\arcsin^2 x =\frac{1}{2}\sum_{n=1}^\infty\frac{(2x)^{2n}}{n^2\binom{2n}{n}}$$
これを $x$ で割ると$$\frac{\arcsin^2 x}{x} =\frac{1}{2}\sum_{n=1}^\infty\frac{2^{2n}x^{2n-1}}{n^2\binom{2n}{n}}$$$0$ から $x$ まで積分すると\begin{equation}\int_0^x\frac{\arcsin^2 u}{u}du =\frac{1}{4}\sum_{n=1}^\infty\frac{(2x)^{2n}}{n^3\binom{2n}{n}}\tag{1}\end{equation}右辺の級数が $n^3$ に上がっています。これを繰り返せば $n^4$ , $n^5$ 等での積分表示も得られることが分かります。実用に堪えるかは別として。
(1)の左辺はポリログを使うと不定積分できます。その結果につながる式がここに書いてありますが、今回の目標では必要ありません。構わず再度 $x$ で割ります。$$\frac{1}{x}\int_0^x\frac{\arcsin^2 u}{u}du =\frac{1}{4}\sum_{n=1}^\infty\frac{2^{2n}x^{2n-1}}{n^3\binom{2n}{n}}$$$0$ から $1/2$ まで積分します。\begin{equation}\int_0^\frac{1}{2}\left(\frac{1}{x}\int_0^x\frac{\arcsin^2 u}{u}du\right) dx =\frac{1}{8}\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^4\binom{2n}{n}}\tag{2}\end{equation}右辺にターゲットが現れました。積分の順序を入れ替えます。$$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^4\binom{2n}{n}}=8\int_0^\frac{1}{2}\frac{\arcsin^2 u}{u}\left(\int_u^\frac{1}{2}\frac{dx}{x}\right) du$$内側の積分を実行して$$=-8\int_0^\frac{1}{2}\frac{\arcsin^2 u}{u}\ln(2u)du$$部分積分を1回すると$$=8\int_0^\frac{1}{2}\frac{\arcsin u}{\sqrt{1-u^2}}\ln^2(2u)du$$$u=\sin\t$ と置換して\begin{equation}\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^4\binom{2n}{n}}=8\int_0^\frac{\pi}{6}\t \ln^2(2\sin\t)d\t\tag{3}\end{equation}この記事の最後で求めた式\begin{equation}\int_0^\frac{\pi}{6} x\ln^2(2\sin x)dx=\frac{17\pi^4}{25920}\tag{4}\end{equation}を直接使って
$$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^4\binom{2n}{n}}=\frac{17}{3240}\pi^4$$
定理1から直ちに
$${}_5F_4\left[\begin{matrix}1,1,1,1,1\\2,2,2,\frac{3}{2}\end{matrix};\frac{1}{4}\right]=\frac{17}{1620}\pi^4$$
Brychkov[1]に同じ式が載っています。系1を、超幾何関数の変換とかで導出できたらいいなあ。
@karenonaharaさん、@iida_256さんに教えていただきましたが、今回扱った級数は Wataru氏[2] に倣って「R値」とよばれたりするようで、\begin{equation}R(k):=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^k\binom{2n}{n}}\tag{5}\end{equation}これは「多重R値」へ拡張され\begin{align}R(k_1,k_2)&:=\sum_{0<n_1<n_2}^\infty\frac{1}{n_1^{k_1}n_2^{k_2}\binom{2n_2}{n_2}}\tag{6a}\\R(k_1,k_2,k_3)&:=\sum_{0<n_1<n_2<n_3}^\infty\frac{1}{n_1^{k_1}n_2^{k_2}n_3^{k_3}\binom{2n_3}{n_3}}\tag{6b}\\&\vdots\end{align}非常に難しそうです。
過去に学んだEuler-sumとも関係がありそうです:
[1] Yury Brychkov, Handbook of Special Functions: Derivatives, Integrals, Series and Other Formulas [2] Wataru. 加速級数で表せる多重ゼータ値. Mathlog. 2024/2/23アクセス
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