「ガンマ関数の基礎」シリーズ第11回は積分表示です。本シリーズではそもそもガンマ関数を積分表示で定義しています。Γ(z)=∫∞0e−ttz−1dt(Rz>0)これを第1番目の積分表示として、今回は以下の表式を取り上げます。
n 階導関数の積分表示Γ(n)(z)=∫∞0e−ttz−1(logt)ndt(Rz>0)指数の変換Γ(z)=sz∫∞0e−sttz−1dt(s>0,Rz>0)オイラーによる表示Γ(z)=∫10(log1x)z−1dx(Rz>0)
ハンケルの積分表示3つΓ(z)=e−iπz2isinπz∫Ce−ttz−1dt(z∉Z)Γ(z)=−12isinπz∫Ce−t(−t)z−1dt(z∉Z)1Γ(z)=i2π∫Ce−t(−t)−zdt※ 経路 C はハンケル積分路
上3つは簡単です(極限操作等の細かいことを気にしなければ)。その下は複素積分であらわされていますので、少々手が込んでいます。
前回の記事はこちら。本記事とあまり関連ありません。
【γ10】ポリガンマ関数の値、極、級数表示、ゼータ関数との関係(ガンマ関数の基礎シリーズ10)
(1)を1回微分すると、指数関数の微分を意識してΓ′(z)=∫∞0e−ttz−1(logt)dtとなります。繰り返すと(2)を得ます。
(1)において正の実数 s に対して t=sx と置換するとΓ(z)=∫∞0e−sx(sx)z−1sdxとなって(3)を得ます。
Whittaker&Watsonによると(4)式は1730年にオイラーが示したものらしいです。右辺の積分で log1x=t とおけば∫0∞tz−1(−e−t)dtとなってガンマ関数に等しいことが示されました。
古いですが有名な書物で、どんどん改訂版が出ています。前半は解析学一般、後半は特殊関数という内容で、網羅的に勉強できます。演習問題に解答がないのが昔ながらのものって感じ。2022/11/6現在、最新版は5th Editionで私も所有していますが、廉価な3rdとかでも十分かと。

A Course of Modern Analysis: fifth Edition

A Course of Modern Analysis: Third Edition
今日のメインです。複素平面におけるハンケル積分路 C は、実軸上の点 R から実軸に沿って原点をまわり、 また実軸に沿って R に戻るものです。そして R→∞ とします。

この積分路を次のように変更しても(5)や(6)の積分値は変わりません。C1 , C3 は実軸ぎりぎりに沿わせ C3 は半径 ϵ の小さな円を描きます。

これから考える被積分関数 e−ttz−1 は、t の偏角が 0→2π へ変化すると値が元に戻りません。よって原点回りにピッタリ1回転させるのは避けねばならないのです。
その1
∫Ce−ttz−1dtなる積分を考えます。∫C=∫C1+∫C2+∫C3より3つの経路に分けて考えます。t の偏角は 0 から 2π までとるとします。つまり t=reiθ とおいたとき 0<θ<2π です。
まず C1 について。θ=+0 なのでt=r です。r は ∞→0 と変化します。よって∫C1e−ttz−1dt=∫0∞e−rrz−1drガンマ関数の定義を思い起こせば∴∫C1e−ttz−1dt=−Γ(z)
次に C2 です。t=ϵeiθ とおいて θ を 0→2π と変化させます。よって∫C2e−ttz−1dt=∫2π0e−ϵ(cosθ+isinθ)(ϵeiθ)z−1iϵeiθdθ=iϵz∫2π0e−ϵ(cosθ+isinθ)eiθzdθ→ϵ→00
最後に C3 です。θ=2π なのでt=re2πi です。r は 0→∞ と変化します。よって∫C3e−ttz−1dt=∫∞0e−r(re2πi)z−1e2πidr=∫∞0e−rrz−1e2πizdr=e2πizΓ(z)
さて、3つの経路をつなぎましょう。∫Ce−ttz−1dt=−Γ(z)+0+e2πizΓ(z)∴Γ(z)=1e2πiz−1∫Ce−ttz−1dtこれでおわりでもいいのですが、次のように変形することもあります。1e2πiz−1=e−πizeπiz−e−πiz=e−πiz2isinπz以上からハンケルの積分表示その1が示されました!
Γ(z)=e−iπz2isinπz∫Ce−ttz−1dt(z∉Z)
その2
∫Ce−t(−t)z−1dtなる積分を考えます。∫C=∫C1+∫C2+∫C3より3つの経路に分けて考えます。今回は −t=reiθ なる置換をします。−t の平面を考えると図2と原点対称の経路になりますので−t の偏角 θは −π から π までとることになります。

まず C1 です。θ=−π なので−t=re−iπ です。r は ∞→0 と変化します。よって∫C1e−t(−t)z−1dt=∫0∞e−r(re−iπ)z−1(−e−iπdr)=∫∞0e−rrz−1e−iπzdr=e−iπzΓ(z)
次に C2 は −t=ϵeiθ として θ を −π から π まで積分します。 「その1」と同様 0 に収束します。
最後は C3 です。θ=π なので−t=reiπ です。r は 0 から ∞ へ変化します。よって∫C3e−t(−t)z−1dt=∫∞0e−r(reiπ)z−1(−eiπdr)=−∫∞0e−rrz−1eiπzdr=−eiπzΓ(z)
以上から∫Ce−t(−t)z−1dt=e−iπzΓ(z)+0−eiπzΓ(z)式を変形すると以下のような2つめのハンケル表示ができます!
Γ(z)=−12isinπz∫Ce−t(−t)z−1dt(z∉Z)
その3(相反公式による)
(8)で z に 1−z を代入するとΓ(1−z)=−12isinπz∫Ce−t(−t)−zdtガンマ関数の相反公式Γ(z)Γ(1−z)=πsinπzによって
1Γ(z)=i2π∫Ce−t(−t)−zdt
これが最後のハンケル表示です。ちなみに相反公式の導出については次の記事をご参照:
【γ2】ガンマ関数の3つの乗積表示と相反公式(ガウス・オイラー・ワイエルシュトラス)
ハンケルの表示1Γ(z)=i2π∫Ce−t(−t)−zdtを用いて Γ(1/2) が求まるか確認せよ。
−t=xeiθ の形に置換し、図3の経路をとります。C2 の経路は ϵ→0 でゼロになることがすぐに分かります。∫Ce−t(−t)−12dt=−∫0∞e−x(xe−iπ)−12e−iπdx−∫0∞e−x(xeiπ)−12eiπdx=−i∫∞0e−xx−12dx−i∫0∞e−xx−12dx=−2i∫∞0e−xx−12dx=−2√πiしたがって1Γ(1/2)=i2π(−2√πi)=1√π∴Γ(1/2)=√π
ハンケルの表示1Γ(z)=i2π∫Ce−t(−t)−zdtにおいて、経路 C を次のように定める。+∞+i より出発し、実軸に平行に進み i に至る(C1)。原点回りを半周して −i に至る(C2)。実軸に沿って +∞−i へ進む(C3)。z=−32 のとき、この積分を数値計算して Γ(−3/2)=4√π3 であることを確かめよ。
C1 で −t=x−i , C2 で −t=eiθ , C3 で −t=x+i と置換すると∫Ce−t(−t)32dt=−∫0−∞ex−i(x−i)32dx−i∫π2−π2eeiθ(e32iθ)eiθdt−∫−∞0ex+i(x+i)32dx=−e−i∫0−∞ex(x−i)32dx−i∫π2−π2eeiθe52iθdt−ei∫−∞0ex(x+i)32dx=−i∫π2−π2eeiθe52iθdt+2iImei∫0−∞ex(x+i)32dx≈0.780136i−3.43882i=−2.65868iしたがってi2π∫Ce−t(−t)32dt≈0.423142≈34√π
以上で冒頭の6つの積分表示を導出できました!なおハンケル積分路による積分はゼータ関数など多くの特殊関数の解析接続に使われるなど、応用性があるので、手を動かして練習するのがおすすめです!
次の記事はシリーズとは独立しています。高校数学で理解できる2本立て:
ガンマ関数の基礎シリーズの次回はこちら!:
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