「ガンマ関数の基礎」シリーズ第7回です。今回はガンマ関数の特殊値のうち初等関数で表せないものを紹介します。
Γ(13),Γ(14),Γ(16)などの特殊値を積分表示する。
ガンマ関数の定義と比較的やさしい特殊値については
純虚数における特殊値 Γ(ix) についてはこちら
本稿とあまり関係ありませんが、シリーズ前回の記事はこちら
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次の積分を考えます。∫10dt√1−tn(n≥3)n=2 でもOKなのですが、解析的に求まるので除外しています。ベータ関数を介することでこの積分がガンマ関数と結びつくことが示せます。
B(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dt(Rx,Ry>0)B(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)
積分において tn=x と置換します。t=x1n となりますから∫10dt√1−tn=∫101nx1n−1dx√1−x=1n∫10x1n−1(1−x)−12dx=1nB(1n,12)=1nΓ(1n)Γ(12)Γ(1n+12)=√πnΓ(1n)Γ(1n+12)ここで過去記事で紹介した次の公式を用います。
Γ(2z)=22z−1√πΓ(z)Γ(z+12)
参考記事:
これの z=1/n とすることでΓ(1n+12)=√πΓ(2n)22n−1Γ(1n)これを先ほどの積分計算に代入すると∫10dt√1−tn=√πnΓ(1n)√πΓ(2n)22n−1Γ(1n)したがって以下の表式を得ます。
∫10dt√1−tn=22n−1Γ(1n)2nΓ(2n)
左辺の積分は基本的な形に見えて実は初等的に書けず、ガンマ関数で表せるのですね。
式(4)で n=2 を考える。両辺を計算して等号が成り立つことを確認せよ。
解析的に計算可能です。左辺と右辺を計算します。LHS=∫10dt√1−tn=[arcsint]10=π2RHS=202√π2=π2よって(4)が成り立っている。
これまでの議論と同様に計算して Γ(13) を積分表示せよ。
(4)に代入するだけでは「やった感」があまりないのでちゃんと導出します。∫10dt√1−t3=13∫10x−23(1−x)−12dx=13B(13,12)=13Γ(13)Γ(12)Γ(56)=√π3Γ(13)Γ(56)=13⋅213Γ(13)2Γ(23)ここで相反公式Γ(z)Γ(1−z)=πsinπzを用いると∫10dt√1−t3=Γ(13)3√3⋅243πしたがって
Γ(13)=(243√3π∫10dt√1−t3)13
と求まりました。
これまでの議論と同様に計算して Γ(14) を積分表示せよ。
∫10dt√1−t4=14∫10x−34(1−x)−12dx=14B(14,12)=14Γ(14)Γ(12)Γ(34)=√π4Γ(14)Γ(34)=14√2Γ(14)2Γ(12)(∵(5))=14√2πΓ(14)2したがって
Γ(14)=2(√2π∫10dt√1−t4)12
倍数公式より Γ(16) を積分表示せよ。
倍数公式(3)に z=1/6 を代入してΓ(13)=2−2/3√πΓ(16)Γ(23)=2−2/3√πΓ(16)2π√3Γ(13)よってΓ(16)=√3√π21/3Γ(13)2=25/935/6π1/6(∫10dt√1−t3)23
Γ(16)=25/935/6π1/6(∫10dt√1−t3)23
(4)を導いたときの要領で∫10t√1−tndtを計算します。tn=x と置換します。t=x1n となりますから∫10t√1−tndt=∫101nx2n−1dx√1−x=1n∫10x2n−1(1−x)−12dx=1nB(2n,12)=1nΓ(2n)Γ(12)Γ(2n+12)=√πnΓ(2n)Γ(2n+12)倍数公式Γ(2z)=22z−1√πΓ(z)Γ(z+12)で z=2/n とすれば∫10t√1−tndt=√πnΓ(2n)24n−1Γ(2n)√πΓ(4n)=24n−1nΓ(2n)2Γ(4n)したがって以下の表式を得ます。
∫10t√1−tndt=24n−1nΓ(2n)2Γ(4n)
(9)で n=3 として Γ(23) を積分表示せよ。
(9)より∫10t√1−t3dt=243−13Γ(23)2Γ(43)=2133Γ(23)213Γ(13)=213Γ(23)2Γ(13)=213Γ(23)2⋅√32πΓ(23)=2−23√3πΓ(23)3以上から
Γ(23)=(223π√3∫10t√1−t3dt)13
積分∫10tm√1−tndtをガンマ関数で表せ。また n=4 , m=2 とすることで Γ(34) を積分表示せよ。
(9)を導いたときと同様にやります。tn=x と置換すると t=x1n となりますから∫10tm√1−tndt=∫101nxm+1n−1dx√1−x=1n∫10xm+1n−1(1−x)−12dx=1nB(m+1n,12)=1nΓ(m+1n)Γ(12)Γ(m+1n+12)=√πnΓ(m+1n)Γ(m+1n+12)倍数公式Γ(2z)=22z−1√πΓ(z)Γ(z+12)で z=m+1n とすれば∫10tm√1−tndt=√πnΓ(m+1n)22m+2n−1Γ(m+1n)√πΓ(2m+2n)=22m+2n−1nΓ(m+1n)2Γ(2m+2n)
∴∫10tm√1−tndt=22m+2n−1nΓ(m+1n)2Γ(2m+2n)
この式はこれまで求めた(4)(9)を含んだより一般的な表示です。
n=4 , m=2 とすると∫10t2√1−t4dt=2124Γ(34)2Γ(32)=2124Γ(34)212√π=1√2πΓ(34)2したがって
Γ(34)=(√2π∫10t2√1−t4dt)12
ベータ関数は次の表示をもちます(過去記事参照)。
B(x,y)=2∫π20sin2x−1θcos2y−1θdθ
これを駆使すれば、ガンマ関数の値を三角関数を含んだ積分で表現できます。たとえば2∫π20sin32θdθ=B(54,12)=Γ(54)√πΓ(74)=4√π3Γ(54)Γ(34)=√π3Γ(14)Γ(34)=√π3Γ(14)2π√2=13√2πΓ(14)2
∴Γ(14)=(6√2π∫π20sin32θdθ)12
今日はベータ関数を介して∫10tm√1−tndt=22m+2n−1nΓ(m+1n)2Γ(2m+2n)であることを突き止めました。そして n,m を適切に定めることでさまざまなガンマ関数の値(積分表示)を得ました。その際には倍数公式や相反公式も駆使しました。
Γ(13)=(243√3π∫10dt√1−t3)13Γ(14)=2(√2π∫10dt√1−t4)12Γ(16)=259356π16(∫10dt√1−t3)23Γ(23)=(223π√3∫10t√1−t3dt)13Γ(34)=(√2π∫10t2√1−t4dt)12
Γ(14)=(6√2π∫π20sin32θdθ)12
本記事では、下記の本を参考にしています。2021年8月現在、第30刷。かなりの廉価ながら特殊関数に関する公式が網羅されています。参照用にするもよし、公式の証明にトライするもよし。

【Amazon】特殊函数 (岩波 数学公式 3)
次回からはディガンマ関数に焦点をあてていきます。
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最初にある積分について、t=1は特異点ではあるのですが、積分としては成立可能ということですか?
はい。冒頭の広義積分は収束します。当ブログには記述してませんが、ベータ関数の積分表示の収束性についてお調べいただくとよいと思います。