「ガンマ関数の基礎」シリーズ第2弾です.ガンマ関数の乗積タイプの公式3つと相反公式を導出します.
前回記事:
において,ガンマ関数の定義は
\begin{equation}\G(z)=\int^\infty_0e^{-t}t^{z-1}dt\quad(\mathfrak{R}z>0)\tag{1}\end{equation}
であり,さまざまな性質や特殊値を得ました.
\begin{equation}\G(z+1)=z\G(z)\tag{2}\end{equation}$$\G(n)=(n-1)!\quad (n\in\NN)$$$$\G\left(n+\frac{1}{2}\right)=\frac{(2n)!}{2^{2n}n!}\sqrt{\pi}$$$$\G\left(-n+\frac{1}{2}\right)=\frac{(-4)^nn!}{(2n)!}\sqrt{\pi}$$
$\G(z)$ は $z=-n$ $(n\in\ZZ^+)$ に$1$位の極をもち,留数は $\dfrac{(-1)^n}{n!}$.
今回はガンマ関数の乗積表示(掛け算しまくる形)を3つ紹介し,有名な相反公式を導出します.
次の関数列を定めます.\begin{equation}G_n(z)\equiv \int^n_0 t^{z-1}\left(1-\frac{t}{n}\right)^ndt\tag{3}\end{equation} (1)と見比べると\begin{equation}\displaystyle\lim_{n\to\infty}G_n(z)=\G(z)\tag{4}\end{equation}(3)において $t=nx$ と置換すると\begin{eqnarray*}G_n(z)&=&\int_0^1(nx)^{z-1}(1-x)^nndx\\&=&n^z\int_0^1x^{z-1}(1-x)^ndx\\&=&n^z\left[\left[\frac{x^z}{z}(1-x)^n\right]_0^1+\frac{n}{z}\int_0^1x^z(1-x)^{n-1}dx\right]\\&=&n^z\left[\frac{n}{z}\int_0^1x^z(1-x)^{n-1}dx\right]\\&=&n^z\left[\frac{n(n-1)}{z(z+1)}\int_0^1x^{z+1}(1-x)^{n-2}dx\right]\\&\vdots&\\&=&n^z\left[\frac{n!}{z(z+1)\cdots(z+n-1)}\int_0^1x^{z+n-1}dx\right]\\&=&\frac{n!n^z}{z(z+1)\cdots(z+n-1)(z+n)}\\&=&\frac{n!n^z}{\prod_{k=0}^n(z+k)}\end{eqnarray*}(4)により
\begin{equation}\G(z)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n!n^z}{\prod_{k=0}^n(z+k)}\tag{5}\end{equation}
を得ます.
前回記事にもあったように,ガンマ関数は $z=0,-1,-2\cdots$ に1位の極をもつのでしたね.(5)の分母はまさにそれを示しています.
なお(5)をガンマ関数の定義として進める記事は:
(5)の右辺を変形します.\begin{eqnarray*}\G(z)&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n!n^z}{\prod_{k=0}^n(z+k)}\\&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty}n^z\frac{\prod_{k=1}^nk}{\prod_{k=0}^n(z+k)}\\&=&\frac{1}{z}\displaystyle\lim_{n\to\infty}n^z\frac{\prod_{k=1}^nk}{\prod_{k=1}^n(z+k)}\\&=&\frac{1}{z}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n^z}{\prod_{k=1}^n(1+\frac{z}{k})}\\&=&\frac{1}{z}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{(\frac{2}{1})^z(\frac{3}{2})^z\cdots(\frac{n}{n-1})^z}{\prod_{k=1}^n(1+\frac{z}{k})}\\&=&\frac{1}{z}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\prod_{k=1}^{n-1}(\frac{k+1}{k})^z}{\prod_{k=1}^n(1+\frac{z}{k})}\\&=&\frac{1}{z}\prod_{n=1}^\infty\frac{(1+\frac{1}{n})^z}{(1+\frac{z}{n})}\end{eqnarray*}よって
\begin{equation}\G(z)=\frac{1}{z}\prod_{n=1}^\infty\frac{(1+\frac{1}{n})^z}{(1+\frac{z}{n})}\tag{6}\end{equation}
話をガウスの公式に戻します.再掲すると
\begin{equation}\G(z)=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n!n^z}{\prod_{k=0}^n(z+k)}\tag{7}\end{equation}
これの逆数をとって計算していきます.オイラー・マスケローニ定数 $\gamma$ の定義
\begin{equation}\gamma=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}-\log n\right)\tag{8}\end{equation}
も途中で用います(後述)。\begin{eqnarray*}\frac{1}{\G(z)}&=&\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\prod_{k=0}^n(z+k)}{n!n^z}\\&=&z\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\prod_{k=1}^n(z+k)}{n!n^z}\\&=&z\displaystyle\lim_{n\to\infty}n^{-z}\prod_{k=1}^n\left(1+\frac{z}{k}\right)\\&=&z\displaystyle\lim_{n\to\infty}e^{-z\log n}\prod_{k=1}^n\left(1+\frac{z}{k}\right)\\&=&z\displaystyle\lim_{n\to\infty}e^{z(\gamma-\sum_{m=1}^n\frac{1}{m})}\prod_{k=1}^n\left(1+\frac{z}{k}\right)\quad(\because(8))\\&=&ze^{\gamma z}\displaystyle\lim_{n\to\infty}\prod_{k=1}^n\left(1+\frac{z}{k}\right)e^{-\frac{z}{k}}\\&=&ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\end{eqnarray*}以上から本記事3つめの乗積表示を得ます.
\begin{equation}\frac{1}{\G(z)}=ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\tag{9}\end{equation}
「ガウスの公式」「オイラーの公式」「ワイエルシュトラスの乗積表示」という3つの公式を解説しました.ガンマ関数をこのように乗積型で書くと,そこからさまざまな公式を導けるので便利です.最後にその例として相反公式を解説します.
オイラー・マスケローニ定数については:
【γ14】オイラー定数の積分表示2選・調和数・積分評価(ガンマ関数の基礎14)
$\sin$ の無限乗積展開を利用します.無限乗積については以下の記事を参考にしてください:
ゼータ関数値の求め方3選(フーリエ級数・パーセヴァルの等式・sin無限乗積)
ガッツリやるなら:
【8】整関数とワイエルシュトラスの因数分解定理①(基本乗積・種数)
$$\sin \pi z=\pi z\prod_{n=1}^\infty\left(1-\frac{z^2}{n^2}\right)$$
(9)より\begin{eqnarray*}\frac{1}{\G(z)\G(1-z)}&=&\frac{1}{-z\G(z)\G(-z)}\\&=&-\frac{1}{z}ze^{\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left(1+\frac{z}{n}\right)e^{-\frac{z}{n}}\cdot (-z)e^{-\gamma z}\prod_{n=1}^\infty\left(1-\frac{z}{n}\right)e^{\frac{z}{n}}\\&=&z\prod_{n=1}^\infty\left(1-\frac{z^2}{n^2}\right)\\&=&\frac{\sin\pi z}{\pi}\end{eqnarray*}従って
\begin{equation}\G(z)\G(1-z)=\frac{\pi}{\sin\pi z}\tag{10}\end{equation}
例えば $z=1/2$ とすることで $\G(1/2)=\sqrt{\pi}$ と簡単に求まりますね.左辺が下のように少し違っても対応できます.$$\G(1+z)\G(1-z)=z\G(z)\G(1-z)=\frac{\pi z}{\sin\pi z}$$
コサインバージョンもあります.(10)において $z$ を $z+1/2$ におきかえて$$\G\left(\frac{1}{2}+z\right)\G\left(\frac{1}{2}-z\right)=\frac{\pi}{\cos\pi z}$$
$$\left|\G(iy)\right|=\sqrt{\frac{\pi}{y\sinh\pi y}}$$を示せ.
相反公式より$$\G(iy)\G(1-iy)=\frac{\pi}{\sin i\pi y}$$であり,この左辺は $-iy\G(iy)\G(-iy)$ に等しいから$$-iy\G(iy)\G(-iy)=\frac{\pi}{\sin i\pi y}$$ここで$$\sin i\pi y=\frac{e^{i(i\pi y)}-e^{-i(i\pi y)}}{2i}=i\sinh \pi y$$したがって$$\G(iy)\G(-iy)=\frac{\pi}{y\sinh\pi y}$$$\G(-iy)=\G(iy)^*$ なので$$\therefore\quad\left|\G(iy)\right|=\sqrt{\frac{\pi}{y\sinh\pi y}}$$
次回:
本記事では、下記の本を参考にしています。2021年8月現在、第30刷。かなりの廉価ながら特殊関数に関する公式が網羅されています。参照用にするもよし、公式の証明にトライするもよし。
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有益な記事をありがとうございます。式(9)の左辺は1/Γ(z)ではないでしょうか。
一つ書き忘れていました。ガウスの公式を導く式変形の最後から3番目の式に関して、右辺の積分にdxが抜けていました。
dxを追記しました!記事の質が上がるので、ご指摘感謝いたします。
これは致命的な誤りですね・・・。結構前の記事なのに放置状態でした。
いくつも指摘いただき、本当に助かります。