【ζ7】ゼータ関数と素数・オイラー積・絶対収束(ゼータ関数の基礎7)

「ゼータ関数の基礎」シリーズ第7回です。前回はこちら:

今日のテーマ

$$\prod_{p}\left(1-\frac{1}{p^s}\right)=\frac{1}{\zeta(s)}\quad(\mathfrak{R}s>1)$$

ただし $\prod_{p}$ はすべての素数について積をとることを表します。素数の話ということで本シリーズの中では番外編っぽくなります。特にこれを発展させる予定はないので息抜きがてらに。

ζから倍数を省いていく

$\mathfrak{R}s>1$ とします。$\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^s}$ より$$2^{-s}\zeta(s)=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{(2n)^s}=\sum_{n\in2\ZZ>0}^{\infty}\frac{1}{n^s}$$最右辺は $n$ がすべての正の2の倍数をとるという意味です。つまり $\zeta(s)$ を $2^{-s}$ 倍すると級数の項が2の倍数のみとなります。したがって$$(1-2^{-s})\zeta(s)=\frac{1}{1^s}+\frac{1}{3^s}+\frac{1}{5^s}+\cdots$$となり、ゼータ関数から2の倍数の項が省かれます。

これに $(1-3^{-s})$ をかけます。$$(1-2^{-s})(1-3^{-s})\zeta(s)=\zeta(s)-2^{-s}\zeta(s)-3^{-s}\zeta(s)+6^{-s}\zeta(s)$$右辺は、ゼータ関数から2の倍数項と3の倍数項を引き、6の倍数項を足しています。6の倍数は2回引かれて1回足されています。よってこの式はゼータ関数から2,3の倍数項を省いたものとなっています。

4の倍数はすでに省かれていますから次は5の倍数を省き、7の倍数を省き・・・と繰り返していきます。「2」をはじめの素数として、 $N$ 番目の素数を $p_N$ とします。すると$$(1-2^{-s})(1-3^{-s})\cdots(1-p_N^{-s})\zeta(s)=1+\sum'\frac{1}{n^s}$$$\sum'$ は $n=1$ を省き、さらに $n=2,3,5,\cdots p_N$ の倍数を省いた自然数について和をとります。すなわち $\sum'$ 内の $n$ は $p_N$ より大きい数しか含みません

したがって次のように評価できます。$\mathfrak{R}s=\sigma$ とおき\begin{eqnarray*}\left|\sum'\frac{1}{n^s}\right|&&\le\sum'\left|\frac{1}{n^s}\right|\\&&=\sum'\frac{1}{n^\sigma}\\&&\le\sum_{n=p_N+1}^{\infty}\frac{1}{n^\sigma}\xrightarrow[]{N\to\infty}0\end{eqnarray*}

よって$$\displaystyle\lim_{N\to\infty}\prod_{n=1}^N(1-p_n^{-s})\zeta(s)=1\quad(\mathfrak{R}s>1)$$

\begin{equation}\therefore\quad\prod_p\left(1-\frac{1}{p^s}\right)=\frac{1}{\zeta(s)}\quad(\mathfrak{R}s>1)\tag{1}\end{equation}

絶対収束と無限積

(1)で完成したようなものなのですが、少し厳密な話をしておきましょう。2以上の自然数 $n$ に対し数列 $\{a_n\}$ を$$a_n=-\frac{1}{n^s}$$と定義します。このとき$$\sum_{n=2}^\infty|a_n|<\infty$$ と有限の値をとるので $$\sum_{n=2}^\infty a_n=\sum_{n=2}^\infty\left(-\frac{1}{n^s}\right)$$は絶対収束します(absolutely convergent)。

級数 $\sum_{n=2}^\infty a_n$ が絶対収束するなら無限積 $\prod_{n=2}^\infty(1+a_n)$ も収束します。(1)左辺はこの無限積を構成する一部ですので、(1)左辺もまた収束します。以上より本日の結論を得ます。

$$\prod_p\left(1-\frac{1}{p^s}\right)=\frac{1}{\zeta(s)}\quad(\mathfrak{R}s>1)$$

なお左辺が収束することから、$\zeta(s)$ は $\mathfrak{R}s>1$ に零点を持たないことが分かります。

リーマンゼータ関数の自明な零点は $\mathfrak{R}s<0$ にあります。具体的には $s=-2,-4,\cdots$ です。これについては:

リーマン予想では残りの零点は $\sigma=1/2$ だよというものですね。

次回はリーマンの積分を導出します:


ゼータ関数の基礎シリーズ第1回はこちら:

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