実数論の練習問題

解析学の基本として実数の過去記事があります。

デデキント切断の概要と例題

有界性と上限・下限および「上限でない」の解説と例題

本来これらの記事に含む予定であった演習問題を本記事で取り上げます。

問題1

2つの実数 $a,b$ に対しては、以下の3つのうち1つだけが常に成立する。
$$a<b\;,\;a=b\;,\;a>b$$

こちらを参照ください(外部サイト)。

https://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~hara/lectures/07/realnumbers.pdf

問題2

2つの実数 $x,y$ が等しい $(x=y)$ ための必要十分条件は$$\forall\epsilon>0\quad,\quad|x-y|<\epsilon$$であることを示せ。
(Aksoy & Khamsi)

【解答】まず $x=y$ とすると $|x-y|=0<\epsilon$. である。
次にその逆を示す。$\forall\epsilon>0\;,\;|x-y|<\epsilon$ のとき、$x\neq y$ と仮定すると2数の差は実数 $r$ を用いて$$|x-y|=r>0$$と書ける。すると $\epsilon=r$ とおけば$$|x-y|\ge\epsilon$$となって前提に矛盾。よって $x=y$.【解答終】

$0.999\cdots=1$ という話がよくあります。左辺は実際には数列なのですが、ここでの内容に合わせてざっくりいえば、どんなに小さな $\epsilon>0$ を決めても、$9$ をたくさん付けることで $|1-0.999\cdots|<\epsilon$ とできます。なので $0.999\cdots=1$ というわけです。

問題3 稠密性2乗バージョン

$0<x<y$ なる $x,y\in\RR$ がある。このとき$$\exists r\in\QQ\quad\mathrm{s.t.}\quad x<r^2<y$$を示せ。ただし平方根を用いてはならない。有理数の稠密性、すなわち任意の異なる2実数の間に有理数が存在することは認めておく。
(Aksoy & Khamsi)

【解答】有理数の集合 $A$ を次で定める。\begin{equation}A:=\{r\in\QQ_{\ge0}|r^2>x\}\tag{1}\end{equation}$x$ はすでに定められた数であり、$A$ は下に有界である。よって$A$ は下限をもつ。下限は有理数とは限らないことに注意して\begin{equation}\inf A=m\in\RR_{> 0}\tag{2}\end{equation}と書ける。

$m^2>x$ と仮定する。\begin{equation}\epsilon:=\min\left\{\frac{m^2-x}{2m},m\right\}\tag{3}\end{equation}と定義すると明らかに $0<\epsilon\le m$ であり\begin{equation}\epsilon\le\frac{m^2-x}{2m}\Longrightarrow x\le m^2-2m\epsilon<(m-\epsilon)^2\tag{4}\end{equation}有理数の稠密性より $a\in\QQ$ が存在して $0\le m-\epsilon<a<m$ が成り立つが、(4)より$$x<(m-\epsilon)^2<a^2<m^2$$である。しかしこれでは $a$ が $A$ の要素となってしまい、下限 $m$ であることに矛盾する。\begin{equation}\therefore\quad m^2\le x<y\tag{5}\end{equation}

さて、実数 $\delta$ を次のように定める。\begin{equation}\delta:=\min\left\{\frac{y-m^2}{2m+1},1\right\}\tag{6}\end{equation}(5)(6)より $0<\delta\le 1$ であることに留意して$$m^2+2m\delta+\delta^2\le m^2+2m\delta+\delta\le y$$\begin{equation}\therefore\quad (m+\delta)^2\le y\tag{7}\end{equation}下限の性質から$$\exists r\in A\quad\mathrm{s.t.}\quad m<r<m+\delta$$(そうでないと、$m+\delta$ が新たな下限になってしまうので)。$$\therefore\quad x<r^2<(m+\delta)^2\le y$$以上から$$\exists r\in\QQ\quad\mathrm{s.t.}\quad x<r^2<y$$が示された。【解答終】

問題4 稠密性3乗バージョン

$0<x<y$ なる $x,y\in\RR$ がある。このとき$$\exists r\in\QQ\quad\mathrm{s.t.}\quad x<r^3<y$$を示せ。ただし平方根や立方根を用いてはならない。有理数の稠密性、すなわち任意の異なる2実数の間に有理数が存在することは認めておく。

【解答】有理数の集合 $A$ を次で定める。\begin{equation}A:=\{r\in\QQ_{\ge0}|r^3>x\}\tag{1}\end{equation}$A$ は下に有界であるので下限 $m$ をもつ。\begin{equation}\inf A=m\in\RR_{> 0}\tag{2}\end{equation}

$m^3>x$ と仮定する。\begin{equation}\epsilon:=\min\left\{\frac{m^3-x}{3m^2+1},1\right\}\tag{3}\end{equation}と定義すると $0<\epsilon\le 1$ であり\begin{eqnarray}\epsilon&\le&\frac{m^3-x}{3m^2+1}\\\Longrightarrow x&\le& m^3-3m^2\epsilon-\epsilon\\&<&m^3-3m^2\epsilon+3m\epsilon^2-\epsilon^3\\&=&(m-\epsilon)^3<m^3\tag{4}\end{eqnarray}有理数の稠密性より $a\in\QQ$ が存在して $m-\epsilon<a<m$ が成り立つが、(4)より$$x<(m-\epsilon)^3<a^3<m^3$$である。しかしこれでは $a\in A$ ということになってしまい、下限が $m$ であることに矛盾する。\begin{equation}\therefore\quad m^3\le x<y\tag{5}\end{equation}

次に実数 $\delta$ を次のように定める。\begin{equation}\delta:=\min\left\{\frac{y-m^3}{3m^2+3m+1},1\right\}\tag{6}\end{equation}(5)(6)より $0<\delta\le 1$ であることに留意して\begin{eqnarray}\delta&\le&\frac{y-m^3}{3m^2+3m+1}\\\Longrightarrow y&\ge& m^3+3m^2\delta+3m\delta+\delta\\&\ge&m^3+3m^2\delta+3m\delta^2+\delta^3\\&=&(m+\delta)^3\end{eqnarray}\begin{equation}\therefore\quad (m+\delta)^3\le y\tag{7}\end{equation}下限の性質から$$\exists r\in A\quad\mathrm{s.t.}\quad m<r<m+\delta$$$$\therefore\quad x<r^3<(m+\delta)^3\le y$$以上から$$\exists r\in\QQ\quad\mathrm{s.t.}\quad x<r^3<y$$が示された。【解答終】

参考文献

・原 隆「実数の構成に関するノート」2023-04-18アクセス

・A.G.Aksoy, M.A.Khamsi, "A Problem Book in Real Analysis (Problem Books in Mathematics) " (2010)

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