【ε論法】一様連続でないことの証明

概要

一様連続とは、関数全体が同じδで押さえられる連続性です。今回はイプシロン・デルタ論法によって一様連続でないことを証明する方法を例題を使って解説します。否定を学ぶことでイプシロン・デルタ論法をより深く理解できるはずです。

そもそも一様連続とは、以下を満たす関数 $f(x)$ です。

一様連続(復習)

任意の $\epsilon>0$ に対してある $\delta>0$ が存在し$$|x-y|<\delta  \Rightarrow |f(x)-f(y)|<\epsilon$$とできる.

そもそも「連続って何?」「一様連続って何?」という方は、過去記事を参照ください。1つ目のリンクには「連続でないこと」の証明の例題があります

【ε論法】関数の連続性とδのテクニック

【ε論法】関数の一様連続性の証明

「一様連続でない」とは?

上記の否定をとれば分かるように $f(x)$ が一様連続でないとは以下を満たすことです。

テーマ:一様連続の否定

ある$\epsilon>0$ が与えられたとき、任意の $\delta>0$ について$$|x-y|<\delta  かつ |f(x)-f(y)|\ge\epsilon$$なる $x , y$ が存在する。

一様連続とは「任意の $\epsilon$ に対して、ホニャララ」という構成ですから、その否定は「ある $\epsilon$ が存在して、ホニャララでない」となります。すべてについて成り立つことの否定は、1つでも成り立たないものがある、ですから

そのホニャララというのは「ある $\delta$ が存在して、ムニャムニャ」という内容ですから、否定バージョンは"そんな $\delta$ は1つもない!"ということなので「任意の $\delta$ についてムニャムニャではない」となります。

ここまで否定バージョンをまとめると「ある $\epsilon$ が存在して、任意の $\delta$ についてムニャムニャではない」という形ができます。

で、ムニャムニャとは $|x-y|<\delta\Longrightarrow|f(x)-f(y)|<\epsilon$ すなわち「 $|x-y|<\delta$ を満たす $x,y$ はすべて$|f(x)-f(y)|<\epsilon$ を満たす」という意味ですから、その否定は「 $|x-y|<\delta$ を満たしても$|f(x)-f(y)|\ge\epsilon$ となってしまう $x,y$ が存在するよ」です。つまり任意の $\delta$ で抑えられた結果 $x,y$ どうしは十分に近いのに、$|f(x)-f(y)|$ は大きいままだというイメージです。

「一様連続でない」というのは以上のように説明できます。

例題:一様連続でないことを示す

例題1

$x\in\mathbb{R}$ で定義される $f(x)=x^2$ は一様連続でない。

定義域が有界であれば $x^2$ は一様連続であることは前回説明しました。

【ε論法】関数の一様連続性の証明

しかし全実数だとそうはいきません。

任意の $\delta>0$ に対し、$x=\delta/2+1/\delta$ , $y=1/\delta$ と定めます。すると $|x-y|=\delta/2<\delta$ となります。$\delta$ は任意ですから、これは $x , y$ が非常に近くできるということを意味します。ところが\begin{eqnarray*}|f(x)-f(y)|&=&|x-y||x+y|\\&=&\frac{\delta}{2}\left(\frac{\delta}{2}+\frac{2}{\delta}\right)\\&=&\frac{\delta^2}{4}+1\ge 1\end{eqnarray*}となり、$f(x)$ と $f(y)$ は1よりも近づかないので一様連続ではありません。ちゃんと書けば以下のようになるでしょう。

$\epsilon=1$ ととると、任意の $\delta>0$ について、$$|x-y|<\delta \;かつ\;|f(x)-f(y)|\ge\epsilon$$ となる $x , y $ が存在する( $x=\delta/2+1/\delta$ , $y=1/\delta$ )。よって一様連続ではない。

例題2

$x>0$ で定義される $f(x)=1/x$ は一様連続でない。

任意の $\delta>0$ に対して $N>1/\delta$ となるような適当な自然数 $N$ を定め$$x=\frac{2}{N}\quad,\quad y=\frac{1}{N}$$とします。これは $|x-y|=1/N<\delta$ を満たしています。

関数値の差を評価すると$$|f(x)-f(y)|=|\frac{N}{2}-N|=\frac{N}{2}\ge\frac{1}{2}$$つまり $\epsilon=1/2$ ととれば以下のようにいえます。

$\epsilon=1/2$ ととると、任意の $\delta>0$ について、$$|x-y|<\delta \;かつ\;|f(x)-f(y)|\ge\epsilon$$ となる $x , y $ が存在するので一様連続ではない。

最後に

$\delta$ を探す一様連続の証明とは少し視点が違っていて、今回は $\delta$ は任意でそれに対して何か1組の $x,y$ を探すという感じでした。一様連続について理解するには、一様連続の否定についてもしっかり考える必要があると思います。

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まめしば
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