1Γ(z)=eπ∫π20cos(zθ−tanθ)cosz−2θdθ(Rz>0)
前回はビネの第1公式の初等的証明を記事にしました:
Binetの第1公式の初等的証明(ログガンマの積分表示)前半
今回はガンマ関数の基礎シリーズに戻ります。かなりきれいな形ですよね!これを導出しましょう。
基本から学ぶ場合は「ガンマ関数の基礎」シリーズ第1回からどうぞ:
【γ1】ガンマ関数の定義・特殊値・解析接続・留数(ガンマ関数の基礎1)
スタート地点はハンケルの積分表示です。複素積分で次のようにあらわされます。
1Γ(z)=i2π∫C(−t)−ze−tdt

実軸の無限大から実軸ぎりぎりに沿ってやってきて、原点回りで半径がとても小さい円を描いて帰っていくものです。この積分について詳細は過去記事参照:
ハンケル+2つの四分円
下のような経路 C′ を設定します。

C=C4+C5+C6 はハンケル積分路です。ρ>0 は大きな数で a>0 です。半円の半径は ρ+a です。閉曲線 C′ 内で (−t)−ze−t は正則なので∫C′(−t)−ze−tdt=0ρ→∞ の極限では(1)を用いて
∫C1+C2+C3(−t)−ze−tdt=2πi1Γ(z)
ただし Rz>0 とします。
-t 平面におきかえる
t ではなく −t の複素平面を考えます。被積分関数において t が「−t」としてあらわれていること、前回ハンケル表示を議論したときにそのようにしたことが理由です。
−t 平面だと先ほどの図と原点対称になりますから経路 C′ は次のように描かれます。

さて −t=reiθ とおきます。上の図によると ρ→∞ のもとで C1 の偏角は π2 から −π2 まで変化します(正確には π2−ϵ などとせねばなりませんが、簡単のため省略)。C2 の偏角は −π2 から −π ですね。C4 ~ C5 にかけて偏角は −π から 0 を経て π へ至ります。 C3 での偏角は π から π2 です。
何でこんなごちゃごちゃしているのかと疑問に思うかもしれません。詳細は省きますが、原点回りに1周することを禁止しているためです。そのため上図において経路が「左半分の実軸をまたいじゃダメ」というルールにしているのです。よって偏角を −π<θ<π と制限しています。
経路 C2 の積分を実行します。目指すはコイツが 0 となること。
点 a を中心として半径 ρ+a の四分円弧となっていますが、ρ を無限大にすると−t=Reiθ(θ:−π2→−π)と置換できます。ここで R≡ρ+a です。
厳密な議論がしたければ始点を θ=−π2+δ , tanδ=aR とする。終点も同様。これで計算しても最後の結果はちゃんと同じになる。
では積分の評価をします。前提知識が要らないように定理等を使わずゴリゴリ計算します!z=x+iy とします。|∫C2(−t)−ze−tdt|=|∫−π−π2(Reiθ)−zeReiθReiθdt|≤R∫−π2−π|R−ze−iθzeRcosθ|dt=RRx∫−π2−π|e−iθzeRcosθ|dt=RRx∫−π2−π|eyθeRcosθ|dt≤ReπyRx∫−π2−πeRcosθdt−π≤θ≤−π2 においてcosθ≤2π(θ+π2)であることを利用して|∫C2(−t)−ze−tdt|≤ReπyRx∫−π2−πe2Rπ(θ+π2)dt=ReπyRxπ2R[e2Rπ(θ+π2)]−π2−π=πeπy2Rx[1−e−R]x>0 でしたから|∫C2(−t)−ze−tdt|→0asR→∞
もし積分範囲の始点が先ほどの −π2+δ であったなら?e2Rπ(θ+π2)|θ=−π2+δ=e2RδπまたRδ≤Rtanδ=aだからe2Rπ(θ+π2)|θ=−π2+δ≤e2aπ<+∞有界なので問題なし。
同様に|∫C3(−t)−ze−tdt|→0asR→∞となります。
経路C1について
t 平面での経路を再掲します。

ここまでをまとめると(3)より R=ρ+a→∞ で∫C1(−t)−ze−tdt=2πi1Γ(z)∴∫−a+i∞−a−i∞(−t)−ze−tdt=2πiΓ(z)
ラプラスによる表示
t=−a−iu と置換すると∫−∞∞(a+iu)−zea+iu(−idu)=2πiΓ(z)∴1Γ(z)=12π∫∞−∞(a+iu)−zea+iuduこれはラプラスによる表示だそうです(原論文は未発見)。
三角関数を用いた表示
a=1 とします。1Γ(z)=12π∫∞−∞(1+iu)−ze1+iuduu=−tanθ とすると1Γ(z)=12π∫−π2π2(1−itanθ)−ze1−itanθ(−dθcos2θ)=e2π∫π2−π2(1−itanθ)−ze−itanθdθcos2θ=e2π∫π2−π2(e−iθcosθ)−ze−itanθdθcos2θ=e2π∫π2−π2eiθzcosz−2θe−itanθdθ=e2π∫π2−π2ei(zθ−tanθ)cosz−2θdθ=e2π∫π2−π2cos(zθ−tanθ)cosz−2θdθ+ie2π∫π2−π2sin(zθ−tanθ)cosz−2θdθ=eπ∫π20cos(zθ−tanθ)cosz−2θdθよって求めていた積分表示が導出できました。
1Γ(z)=eπ∫π20cos(zθ−tanθ)cosz−2θdθ(Rz>0)
前回のハンケル表示を応用して、ガンマ関数の新たな積分表示を導くことができました。第11回(前回)から積分表示を次々と導出していきますので、流れが分かるように順に読んでいただければと思います。
参考にしたのはWhittaker-Watsonの"A Course of Modern Analysis"の第3版、Chapter12です。最近はこれを読んで、自分なりに行間を埋め、問題を解いて記事に起こしていることがたびたびあります。
古いですが有名な書物で、どんどん改訂版が出ています。前半は解析学一般、後半は特殊関数という内容で、網羅的に勉強できます。演習問題に解答がないのが昔ながらのものって感じ。2022/11/6現在、最新版は5th Editionで私も所有していますが、廉価な3rdとかでも十分かと。

A Course of Modern Analysis: fifth Edition

A Course of Modern Analysis: Third Edition
次回は積分路を放物線にとった積分表示です:
ガンマ関数の逆数を級数展開した記事:
ベータ関数の逆数も積分表示しました。
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