ルジャンドル多項式とラプラスの積分表示(母関数とワイエルシュトラス置換)

概要

ルジャンドル多項式(より一般にはルジャンドル関数)にはいろいろな表現があり,積分表示もその1つです.今日はラプラスの積分表示といわれるものを導出します.とある簡単な定積分から母関数を導いて無限級数を比較するという手法です.

テーマ:ラプラスの積分表示

\begin{equation}P_n(x)=\frac{1}{\pi}\int^\pi_0(x\pm\sqrt{x^2-1}\cos\theta)^nd\theta\tag{1}\end{equation}

$P_n(x)$ はルジャンドル多項式です.これがそもそも何なのかは過去記事を参照ください.

ルジャンドル多項式の母関数

級数展開でルジャンドル多項式を得られるという有名な等式があります.

\begin{equation}\sum_{n=0}^\infty P_n(x)t^n=\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}\tag{2}\end{equation}

物理でときどき使う式です.右辺を母関数といいます.証明したいところですが本旨とそれるので今はこれを認めておきます.

ある積分を求めておく

さて本題に入る前に準備として次の定積分の式を示しておきます.

\begin{equation}\int_0^\pi\frac{d\theta}{a\pm b\cos\theta}=\frac{\pi}{\sqrt{a^2-b^2}}\quad (a^2>b^2)\tag{3}\end{equation}

方法はいろいろあるのですがワイエルシュトラス置換を用いることにします.この置換に関する参考記事は

$\tan\displaystyle\frac{\theta}{2}=t$ とおくと$$\cos x =\frac{1-t^2}{1+t^2}\;,\;dx=\frac{2dt}{1+t^2}$$と書き直せるので\begin{eqnarray*}\int_0^\pi\frac{d\theta}{a\pm b\cos\theta}&=&\int_0^\infty \frac{1}{a\pm b\frac{1-t^2}{1+t^2}}\frac{2dt}{1+t^2}\\ &=& \int_0^\infty \frac{2dt}{a+at^2\pm b\mp bt^2}\\ &=& \int_0^\infty \frac{2dt}{a\pm b+(a\mp b)t^2}\\ &=& \frac{\pi}{\sqrt{a^2-b^2}}\end{eqnarray*} でOKです.

積分表示の導出

(3)において $a=1-tx$ , $b=t\sqrt{x^2-1}$ とすると $a^2-b^2=1-2tx+t^2$ となるので$$ \frac{\pi}{\sqrt{1-2tx+t^2}}=\int_0^\pi \frac{d\theta}{1-tx\pm t\sqrt{x^2-1}\cos\theta}$$(2) により\begin{equation} \sum_{n=0}^\infty P_n(x)t^n =\frac{1}{\pi} \int_0^\pi \frac{d\theta}{1-tx\pm t\sqrt{x^2-1}\cos\theta} \tag{4}\end{equation}

右辺の積分は\begin{eqnarray*}&&\int_0^\pi \frac{d\theta}{1-tx\pm t\sqrt{x^2-1}\cos\theta}\\&=& \int_0^\pi \frac{d\theta}{1-(x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta)t} \\&=& \int_0^\pi\left[1+(x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta)t+( x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta )^2t^2\cdots\right]d\theta\\&=& \int_0^\pi\sum_{n=0}^\infty ( x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta )^nt^nd\theta\\&=& \sum_{n=0}^\infty t^n \int_0^\pi ( x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta)^nd\theta \end{eqnarray*}よって(4)は$$\sum_{n=0}^\infty P_n(x)t^n= \frac{1}{\pi} \sum_{n=0}^\infty t^n \int_0^\pi ( x\pm \sqrt{x^2-1}\cos\theta)^nd\theta $$両辺が $t$ の無限級数であり,比べると \begin{equation}P_n(x)=\frac{1}{\pi}\int^\pi_0(x\pm\sqrt{x^2-1}\cos\theta)^nd\theta\end{equation}

これでLaplaceの積分表示を示せました!

ルジャンドル関数 $P_\nu(x)$ でも成立?

ルジャンドル多項式について見てきましたが『岩波数学公式III』によると,多項式のみならず一般のルジャンドル関数 $P_\nu(x)$ でも成立するそうです.時間を見つけて検討したいと思います.

これとは別に「シュレーフリの積分表示」というものもあります:


ベッセル関数の積分表示は本サイトで人気があるようです:


特殊関数については「ガンマ関数の基礎」シリーズ全20回があります。第1回は:

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