「ガンマ関数の基礎」シリーズ第3回は,ベータ関数を紹介し,ガンマ関数との関係を導きます.大変便利な関係式です.
本シリーズではガンマ関数を次の積分によって定義しています.
Γ(z)=∫∞0e−ttz−1dt(Rz>0)
今回の予備知識はこれだけでOKですが,初回から見ていく場合は過去記事をご覧ください.
B(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dt(Rx,Ry>0)
これを「第1種オイラー積分」ともいいます.ここで tx−1≡e(x−1)logt , (1−t)y−1≡e(y−1)log(1−t) です。
(2)において t を 1−t に置換するとB(x,y)=B(y,x)が容易に導けます.また(2)において t=sin2θ と置換するとB(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dt=∫π20sin2x−2θcos2y−2θ⋅2sinθcosθdθ=2∫π20sin2x−1θcos2y−1θdθよって
B(x,y)=2∫π20sin2x−1θcos2y−1θdθ
割と使える関係式です.
ガンマ関数はベータ関数と密接な関係にあります.定義(1)からΓ(x)Γ(y)=(∫∞0sx−1e−sds)(∫∞0ty−1e−tdt)=∫∞0∫∞0sx−1ty−1e−s−tdsdt重積分の変数をs=uv,t=u(1−v)とおくと u=s+t , v=ss+t より積分範囲は u≥0 , 0<v≤1 となります.ヤコビアンは|∂s∂u∂s∂v∂t∂u∂t∂v|=|vu1−v−u|=−uなのでdsdt=ududvしたがってΓ(x)Γ(y)=∫∞0du∫10dv(uv)x−1(u(1−v))y−1e−uu=∫∞0du∫10dvux+y−1vx−1(1−v)y−1e−u=(∫10vx−1(1−v)y−1dv)(∫∞0ux+y−1e−udu)=B(x,y)Γ(x+y)よって以下の公式を得ます.
B(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)
今回現れた式をまとめると
Γ(z)=∫∞0e−ttz−1dt(Rz>0)B(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dt(Rx,Ry>0)B(x,y)=2∫π20sin2x−1θcos2y−1θdθB(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)
これらを用いて例題をみていきましょう.
∫π20sin5θcos11θdθ
∫π20sin5θcos11θdθ=12B(3,6)(∵(3))=12Γ(3)Γ(6)Γ(9)=2⋅5!2⋅8!=1336
∫π20sin4θcos6θdθ
∫π20sin4θcos6θdθ=12B(52,72)=12Γ(52)Γ(72)Γ(6)=3π512
∫1−1(1−x2)ndx(n∈N)
t=1+x2 とおくと∫10(1−x2)ndx=22n+1∫10tn(1−t)ndt=22nB(n+1,n+1)=22n+1Γ(n+1)Γ(n+1)Γ(2n+2)=22n+1(n!)2(2n+1)!
∫π20√cotθdθ
∫π20√cotθdθ=∫π20sin−12θcos12θdθ=12B(14,34)=Γ(14)Γ(34)2=π√2最後は相反公式を用いました.
∫π20√cosθdθをガンマ関数で表せ.
∫π20√cosθdθ=12B(12,34)=√πΓ(34)2Γ(54)=2√πΓ(34)Γ(14)=2√πΓ(34)2√2π=√2πΓ(34)2
In≡∫∞0dx√1+xn,3≤n∈N
xn/2=tanθ とおくとn2xn2−1dx=dθcos2θよりIn=2n∫π201{(tanθ)2n}n2−1√1+tan2θdθcos2θ=2n∫π20dθcosθ(tanθ)1−2n=2n∫π20dθ(cosθ)2n(sinθ)1−2n=2n∫π20(1−sin2θ)−1n(sinθ)2n−1dθsin2θ=t とおくと 2√t√1−tdθ=dt よりIn=2n∫10(1−t)−1nt1n−12dt2t12(1−t)12=1n∫10t1n−1(1−t)−1n−12dt=1n∫10t1n−1(1−t)−1n+12−1dtここでベータ関数(第1種オイラー積分)B(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dtを用いるとIn=1nB(1n,12−1n)となります。ベータ関数とガンマ関数の関係B(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)によってIn=1nB(1n,12−1n)=1nΓ(1n)Γ(12−1n)Γ(12)=1nΓ(1n)Γ(12−1n)√π
以上から求める積分値は∫∞0dx√1+xn=1nΓ(1n)Γ(12−1n)√πたとえば∫∞0dx√1+x3=13√πΓ(13)Γ(16)
Imn≡∫∞0dxm√1+xn(n>m)
t=xn1+xn と置換するとdtdx=nxn−1(1+xn)2≥0より t は単調増加で積分範囲は [0,1] となります。また1+xn=11−tdx=1nt1n−1(1−t)−1−1ndtからImn=∫10(1−t)1m1nt1n−1(1−t)−1−1ndt=1n∫10t1n−1(1−t)1m−1n−1dt=1nB(1n,1m−1n)=1nΓ(1n)Γ(1m−1n)Γ(1m)=Γ(n+1n)Γ(1m−1n)Γ(1m)上の式変形でベータ関数(第1種オイラー積分)の定義B(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dtおよびベータ関数とガンマ関数の関係B(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)を用いています。
以上より結論は、自然数 n>m に対して∫∞0dxm√1+xn=Γ(n+1n)Γ(1m−1n)Γ(1m)
B(x,y)=∫∞0ty−1(1+t)x+ydtを示せ。
定義式で t=11+s とおけばB(x,y)=∫10tx−1(1−t)y−1dt=∫0∞1(1+s)x−1sy−1(1+s)y−1−ds(1+s)2=∫∞0sy−1(1+s)x+yds
limn→∞nzB(z,n)=Γ(z)を示せ。
nzB(z,n)=nz∫10tz−1(1−t)n−1dt=n∫10(nt)z−1(1−t)n−1dtnt=s とおきます。nzB(z,n)=n∫n0sz−1(1−sn)n−1dsn=∫n0sz−1[(1−sn)−ns]−sn−1ndsn→∞→∫∞0sz−1e−sds=Γ(z)
∫1−1(1+x)p−1(1−x)q−1dx=2p+q−1B(p,q)を示せ。
1+x=2t とおきます。LHS=∫10(2t)p−1[2(1−t)]q−12dt=2p+q−1∫10tp−1(1−t)q−1dt
∫π0dθ√3−cosθ=Γ(14)24√πを示せ。cosθ=1−2tanx2 とおくとよい。
LHS=∫π201√2+2tanx2dx√4tanx2−4tan2x2cos2x2=12∫π20cos−12xsin−12xdx=14B(14,14)
p,q>0 とする。∫1−1(1+x)2p−1(1−x)2q−1(1+x2)p+qdx=2p+q−2B(p,q)を示せ。
x=tanθ とおくとLHS=∫π4−π4(cosθ+sinθ)2p−1(cosθ−sinθ)2q−1dθ=2p+q−1∫π4−π4sin2p−1(θ+π4)cos2q−1(θ+π4)dθ=2p+q−1∫π20sin2p−1θcos2q−1θdθ=2p+q−2B(p,q)(∵(3))
ほかにもベータ関数を応用した記事はこちら:
「ガンマ関数の基礎」シリーズ次回はこちら:
本記事では、下記の本を参考にしています。2021年8月現在、第30刷。かなりの廉価ながら特殊関数に関する公式が網羅されています。参照用にするもよし、公式の証明にトライするもよし。

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例題11枠内のcosが斜体になっていました。
ベータ関数はガンマ関数と繋がる公式しか知りませんでしたが、なかなか便利で色んなところで使えそうですね。
直しました、どうもありがとうございます!
私もこの「ガンマ関数の基礎」シリーズを書く前は、ガンマ関数との関係式とオイラーの積分表示くらいしか知りませんでした。
当サイトの積分の記事を適当に見ていっていただくと、ベータ関数がたくさんの積分に応用できること、ベータ関数の偏微分もまた便利なことが分かると思います。