重積分\begin{equation}I\equiv\int_0^1\int_0^1\frac{dxdy}{1-x^2y^2}\tag{1}\end{equation}を用いて$$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}$$を示せ。
前回と似ていますが少し違います:
参考にした論文はこちら:
$I$ を級数展開するとゼータ関数が現れます。\begin{eqnarray*}I&&=\int_0^1\int_0^1\frac{dxdy}{1-x^2y^2}\\&&=\int_0^1\left(\int_0^1(1+x^2y^2+x^4y^4+\cdots)dx\right)dy\\&&=\int_0^1\left[x+\frac{x^3}{3}y^2+\frac{x^5}{5}y^4+\frac{x^7}{7}y^6+\cdots\right]_{x=0}^1dy\\&&=\int_0^1\left(1+\frac{1}{3}y^2+\frac{1}{5}y^4+\cdots\right)dy\\&&=\left[y+\frac{y^3}{3^2}+\frac{y^5}{5^2}+\frac{y^7}{7^2}\cdots\right]_0^1\\&&=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{(2n+1)^2}\\&&=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}-\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{(2n)^2}\\&&=\frac{3}{4}\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}\end{eqnarray*}
よって
\begin{equation}\int_0^1\int_0^1\frac{dxdy}{1-x^2y^2}=\frac{3}{4}\zeta(2)\tag{2}\end{equation}
(1)式において\begin{equation}x=\frac{\sin u}{\cos v}\quad,\quad y=\frac{\sin v}{\cos u}\tag{3}\end{equation}と置換します。ただし $u,v$ の区間は $[0,\frac{\pi}{2}]$ とします。
このときヤコビアンは\begin{eqnarray*}\left|\begin{matrix}\frac{\cos u}{\cos v}&&\frac{\sin u\sin v}{\cos^2v}\\\frac{\sin v \sin u}{\cos^2 u}&&\frac{\cos v}{\cos u}\end{matrix}\right|&&=1-\frac{\sin^2u\sin^2v}{\cos^2u\cos^2v}\\&&=1-x^2y^2\end{eqnarray*}なので、正方形の積分範囲を $D$ とおくと$$I=\iint_D\frac{dxdy}{1-x^2y^2}=\iint_Ddudv$$
次に積分範囲を求めましょう。$0\le x\le 1$ , $0\le y\le 1$ ですから(3)より$$0\le\sin u\le\cos v\quad,\quad 0\le\sin v\le \cos u$$変形して$$0\le\sin u\le\sin(\frac{\pi}{2}-v)\quad,\quad 0\le\sin v\le \sin(\frac{\pi}{2}-u)$$いま考えている範囲では $\sin$ は単調増加ですので、$$0\le u\le\frac{\pi}{2}-v\quad,\quad0\le v\le\frac{\pi}{2}-u$$を得ます。以上から積分範囲 $D$ は$$0\le u\le\frac{\pi}{2}\quad,\quad 0\le v\le\frac{\pi}{2}-u$$と表すことができます。
これを使って積分を計算すると\begin{eqnarray*}I&&=\iint_Ddudv\\&&=\int_0^\frac{\pi}{2}\left(\int_0^{\frac{\pi}{2}-u}dv\right)du\\&&=\int_0^\frac{\pi}{2}\left(\frac{\pi}{2}-u\right)du\\&&=\left[\frac{\pi}{2}u-\frac{u^2}{2}\right]_0^\frac{\pi}{2}\\&&=\frac{\pi^2}{8}\end{eqnarray*}
よって次の等式が成立します。
\begin{equation}\int_0^1\int_0^1\frac{dxdy}{1-x^2y^2}=\frac{\pi^2}{8}\tag{4}\end{equation}
(2)(4)より次の結論を得ます。
$$\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}$$
(1)の一般化の方法としては、$x,y$ につく次数を増やしていくものと、次数はそのままで $x,y,z\cdots$ と変数を増やしていくものが考えられます。
前者の方は\begin{eqnarray*}\int_0^1\int_0^1\frac{dxdy}{1-x^3y^3}&&=\int_0^1\left(\int_0^1(1+x^3y^3+x^6y^6+\cdots)dx\right)dy\\&&=\int_0^1\left[x+\frac{x^4}{4}y^3+\frac{x^7}{7}y^6+\frac{x^{10}}{10}y^9+\cdots\right]_{x=0}^1dy\\&&=\int_0^1\left(1+\frac{1}{4}y^3+\frac{1}{7}y^6+\cdots\right)dy\\&&=\left[y+\frac{y^4}{4^2}+\frac{y^7}{7^2}+\frac{y^{10}}{10^2}\cdots\right]_0^1\\&&=\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{(3n+1)^2}\\&&=\frac{1}{9}\zeta\left(2,\frac{1}{3}\right)\end{eqnarray*}のようにゼータ関数が現れます。左辺の積分計算ができるかは別として・・・。
一方、後者の方法では\begin{eqnarray*}\int_0^1\int_0^1\int_0^1\frac{dxdydz}{1-x^2y^2z^2}&&=\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{(2n+1)^3}\\&&=\frac{7}{8}\zeta(3)\end{eqnarray*}ここで$$x=\frac{\sin s}{\cos t}\;,\; y=\frac{\sin t}{\cos u}\;,\; z=\frac{\sin u}{\cos s}$$とサイクリックに置くとヤコビアンが$$dxdydz=(1+x^2y^2z^2)dsdtdu$$となってしまい、分母分子が消去できず複雑になります。$\zeta(3)$ の値が未解決であることを考えると、まぁ積分は不可能なのでしょう。そこで考える積分を$$I=\int_0^1\int_0^1\int_0^1\frac{dxdydz}{1+x^2y^2z^2}$$にしてみると$$I=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)^3}=\beta(3)$$であり、なおかつ$$I=\iiint_{V}dsdtdu$$となります。$\beta(s)$ はディリクレのベータ関数です。この積分値は次の領域 $V$ の体積です。$$V=\left\{(s,t,u)| s,t,u\ge 0\;,\;s+t\le\frac{\pi}{2},t+u\le\frac{\pi}{2},u+s\le\frac{\pi}{2}\right\}$$この体積の求め方を示した論文もあるのですが、結構難しかったです。
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