火砕岩中の輝沸石

沸石類についてはあまり標本を見たことがなく、知らないことが多いのと、種類が多くて敬遠しているところです。今回は輝沸石のサンプルを手に入れましたので学んだことをばらばらと書いていきます。

過去のレビ沸石の記事はこちら。

写真１は母岩全体で、大きさは拳くらいです。右下の無色の集合体が輝沸石です（他の沸石も混じっているかも）。沸石のはっきりした結晶は、このように母岩の穴の中に形成されます。

輝沸石について

輝沸石はヒューランダイト(heulandite)ともよばれ、自形結晶は六角板状、菱形板状です[4]。写真2では六角形の上半分が重なって見て取れます。きれいな六角形というよりは、ヨーロッパのアンティークな棺桶のように縦長な感じです。あるいは細長い菱形の鋭角を切り落とした感じ。輝沸石は一方向に劈開がよく発達して、真珠光沢を放ちます。火成岩、凝灰岩、熱水鉱床、スカルン、堆積岩などの中に極めて普通に産します。輝沸石には灰輝沸石・ソーダ輝沸石・カリ輝沸石・ストロンチウム輝沸石の4種類があり、前者２つが日本でよく見られます[4][5]。真珠光沢は束沸石と似ていますが、束沸石はその名の通り長板が束になって、時には放射状～球状になっています。そんな時は容易に区別できます。

沸石類は低温の熱水から生じることが多いです。例えば海水が玄武岩質マグマの熱で温められて熱水となり、玄武岩自身の気孔にしみこんで、沸石が充填されます[6]。また凝灰岩の続成作用の過程で火山灰の火山ガラスの分解によっても生じます[6]。

凝灰岩は堆積岩です。堆積岩は続成作用を受けます。砕屑物が川や風などで運搬されて堆積物となったあと、固まって堆積岩となるまでの過程を続成作用というのです。堆積物はどんどん上に重なっていきますが、そのとき下に埋没した堆積物はやや高温・高圧になり、変成作用ともいえる作用を受けるようになります。このように、続成作用と変成作用は明確な線引きがなく漸移的です（話は逸れますが、かなり高温の変成作用と火成作用も漸移的です）。沸石類はまさにこのような作用を受ける場でできます。苦鉄質の凝灰岩が続成作用と変成作用の中間のようなところで輝沸石が生じます。もう少し変成度が上がって「沸石相」という変成相になると、輝沸石が濁沸石と石英に分解します。ここでは凝灰岩の埋没を例にしましたが、同様の温度・圧力条件下であれば、凝灰岩以外の原岩から沸石が生じる可能性がありますし、上記と異なるメカニズムで生じることもあり得ます。

果たして今回の輝沸石がどのようにしてできたか。上記も参考にしつつ考えたいところです。

ネットによる情報

大洞林道という地名を調べてみると、沸石の産地として知られているようで [1][2] によるとプロピライト化した凝灰角礫岩を母岩として産します。このサンプルがそれなのかは調べてみたいです。プロピライト化の例として斜長石が曹長石や緑簾石に変化するという現象がありますが、あまり使われない言葉なのか、調べてもすっきりしないが、プロピライト化は沸石相よりも少し変成度が高い。ブドウ石-パンペリー相や緑色片岩相においては苦鉄質変成岩中に曹長石や緑簾石が生じますが[3]、それと関連するのでしょうか。そのあたりの変成相ではほかに緑泥石、緑閃石、方解石、石英などが生ずる可能性があります。

母岩について

母岩は全体的に表面が灰緑色ですが、内部は暗褐色でスコリアのような雰囲気に見えます。表面は変質をうけてぐしゃぐしゃで何が何やらよく分かりません。長波で蛍光する部分はありませんでした。方解石がないか、塩酸を使って確かめたいところ。

参考文献

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まめしば

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