シュトルツ・チェザロの定理(数列の極限)

今日はStolz–Cesàro theoremについて解説します。参考文献は藤原松三郎『数学解析第一編 微分積分学 第1巻』です。

前回の記事:

数列の上極限と下極限

数列の収束に関する記事(前提知識として重要):

【ε論法】数列の収束と極限・例題 ~εとNを使って~

定理の導出

シュトルツ・チェザロの定理は次のようなものです(ほか、バリエーションあり)。

定理1(Stolz–Cesàro theorem)

数列 $\{A_n\}$ と $\{S_n\}$ があり、$\{S_n\}$ は狭義単調増加 $S_1<S_2<\cdots$ とし、かつ $S_n\to\infty$ とする。このとき$$\lim_{n\to\infty}\frac{A_{n+1}-A_n}{S_{n+1}-S_n}=s\;\Longrightarrow \;\lim_{n\to\infty}\frac{A_n}{S_n}=s$$

まずこれを証明しましょう。仮定より$$\forall\epsilon>0\;,\;\exists N\in\NN\;,\;\forall n>N\;,\;\left|\frac{A_{n+1}-A_n}{S_{n+1}-S_n}-s\right|<\frac{\epsilon}{2}$$これを変形すると $S_{n+1}-S_n>0$ に注意して$$(S_{n+1}-S_n)\left(s-\frac{\epsilon}{2}\right)<A_{n+1}-A_n<(S_{n+1}-S_n)\left(s+\frac{\epsilon}{2}\right)$$$n$ を $N$ から $n-1$ まで変化させて和をとります。$$\left(s-\frac{\epsilon}{2}\right)(S_n-S_N)<A_n-A_N<\left(s+\frac{\epsilon}{2}\right)(S_n-S_N)$$各辺に $A_N$ を足して $S_n$ で割ると$$s-\frac{\epsilon}{2}+\frac{A_N-S_N(s-\frac{\epsilon}{2})}{S_n}<\frac{A_n}{S_n}<s+\frac{\epsilon}{2}+\frac{A_N-S_N(s+\frac{\epsilon}{2})}{S_n}$$$N$ は定数であることに注意すると、$S_n$ は発散列ですので自然数 $N'$ が存在し、$\forall n>N'$ に対して$$\left|\frac{A_N-S_N(s\pm\frac{\epsilon}{2})}{S_n}\right|<\frac{\epsilon}{2}$$とできます。よって $N$ , $N'$ よりも大きいあらゆる $n$ に対して$$\left|\frac{A_n}{S_n}-s\right|<\epsilon$$これにて定理1は示されました。

系と応用

 定理1で特に $S_n=n$ とすると次の系を得ます。

系1

数列 $\{A_n\}$ に対し$$\lim_{n\to\infty}(A_{n+1}-A_n)=s\;\Longrightarrow \;\lim_{n\to\infty}\frac{A_n}{n}=s$$

また系1において $A_n:=x_1+x_2+\cdots +x_n$ とすると

系2(算術平均)

$$\lim_{n\to\infty}x_n=s\;\Longrightarrow \;\lim_{n\to\infty}\frac{x_1+x_2+\cdots +x_n}{n}=s$$

数列の極限が存在すれば、その(算術)平均もまた同じ値に収束するということですね。この系2において $x_n=\log a_n$ とおくことで次の事実が得られます。

系3(幾何平均)

$a_n>0$ , $a_n\to\alpha$ なら$$\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}=\alpha$$

系3をさらに応用します。$y_0=1$ , $y_n=n$ なる数列によって $a_n=\dfrac{y_n}{y_{n-1}}$ と定めます。 すると $a_n\to 1$ です。また$$\sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}=\sqrt[n]{\frac{y_n}{y_0}}=\sqrt[n]{n}$$となりますから系3にそのまま当てはめて$$\sqrt[n]{n}\to 1$$また、系3において $a_n=\left(1+\dfrac{1}{n}\right)^n$ とすると $a_n\to e$ です。また$$\sqrt[n]{a_1 a_2 \cdots a_n}=\sqrt[n]{\frac{2}{1}\left(\frac{3}{2}\right)^2\cdots \left(\frac{n+1}{n}\right)^n}=\frac{n+1}{\sqrt[n]{n!}}$$となることから$$\frac{n+1}{\sqrt[n]{n!}}\to e\quad,\quad \sqrt[n]{n!}\to\infty$$と分かります。あるいは分子 $n+1$ をばらすことで$$\frac{n}{\sqrt[n]{n!}}\to e$$まとめると次のようになります。

系4

$$\lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{n}=1$$$$\lim_{n\to\infty}\frac{n}{\sqrt[n]{n!}}=e\quad,\quad \lim_{n\to\infty}\sqrt[n]{n!}=\infty$$

定理の言いかえ

定理1において $S_n$ は狭義単調増加でしたから、$a_n>0$ として$$S_n=a_1+a_2+\cdots+a_n$$と定めることができます。また $A_n=a_1u_1+a_2u_2+\cdots +a_nu_n$ とすると$$\frac{A_{n+1}-A_n}{S_{n+1}-S_n}=u_{n+1}$$したがって定理1は次のように書き換えることができます。

定理2

$a_n>0$ , $a_1+a_2+\cdots+a_n:=S_n \to \infty$ とする。このとき$$\lim_{n\to\infty}u_n=s\;\Longrightarrow\;\lim_{n\to\infty}\frac{a_1u_1+a_2u_2+\cdots+a_n u_n}{a_1+a_2+\cdots +a_n}=s$$

定理1から派生したので証明不要ですが、ε論法の練習としてやっておきます。

仮定より$$\forall\epsilon>0\;,\;\exists N\in\NN\;,\;\forall n>N\;,\;\left|u_n-s\right|<\frac{\epsilon}{2}$$とできます。この $n$ に対して\begin{eqnarray*}\left|\frac{a_1u_1+\cdots+a_n u_n}{a_1+\cdots +a_n}-s\right| &=& \left|\frac{a_1(u_1-s)+\cdots +a_n(u_n-s)}{a_1+\cdots +a_n}\right|\\ &<& \left|\frac{a_1(u_1-s)+\cdots +a_N(u_N-s)}{a_1+\cdots +a_n}\right|\\&&+ \left|\frac{a_{N+1}(u_{N+1}-s)+\cdots +a_n(u_n-s)}{a_1+\cdots +a_n}\right| \\ &<& \left|\frac{a_1(u_1-s)+\cdots +a_N(u_N-s)}{a_1+\cdots +a_n}\right|\\&&+ \frac{\frac{\epsilon}{2}(a_{N+1}+\cdots +a_n)}{a_1+\cdots +a_n}\\ &<& \left|\frac{a_1(u_1-s)+\cdots +a_N(u_N-s)}{a_1+\cdots +a_n}\right|\\&&+ \frac{\epsilon}{2}\end{eqnarray*}ここで$$\left|\frac{a_1(u_1-s)+\cdots +a_N(u_N-s)}{a_1+\cdots +a_{N'}}\right|<\frac{\epsilon}{2}$$となる自然数 $N'$ をとると、$N$ , $N'$ よりも大きいすべての自然数 $n$ に対して$$\left|\frac{a_1u_1+\cdots+a_n u_n}{a_1+\cdots +a_n}-s\right|<\epsilon$$したがって$$\lim_{n\to\infty}\frac{a_1u_1+a_2u_2+\cdots+a_n u_n}{a_1+a_2+\cdots +a_n}=s$$

本記事は下記の本を参考にしています。古いですが、演習も多く、役に立ちます。少し高額なのが難点。


微分積分学 第1巻―数学解析第一編 (數學解析 第 1編)

次はこちら:

無限級数の収束性1(コーシー、ダランベールなど)

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