無限級数の収束性1(コーシー、ダランベールなど)

前回はこちら:

シュトルツ・チェザロの定理(数列の極限)

数列の基本はこちらから。ε論法についても学習できます:

【ε論法】数列の収束と極限・例題 ~εとNを使って~

Today's Theme

無限級数が収束する条件について。その基本となる考え方から、コーシーの判定法、ダランベールの判定法を学ぶ。

高等学校の数列の知識を前提とします。参考文献は藤原松三郎『微分積分学 第1巻』です。

本記事は下記の本を参考にしています。古いですが、演習も多く、役に立ちます。少し高額なのが難点。


微分積分学 第1巻―数学解析第一編 (數學解析 第 1編)

数列の収束と同様に考える

無限級数 $\sum a_n$ は第 $n$ 項までの部分和 $S_n$ の極限ですので、 $S_n$ の一般項が分かればその収束性はすなわち $\sum a_n$ のそれとなります。数列の収束については

【ε論法】数列の収束と極限・例題 ~εとNを使って~

あるいはコーシー列であることを使って収束性を示すもの

【ε論法】数列がコーシー列であることの証明および収束性

【ε論法】コーシー列でないことの証明

を参考にしてください。

調和級数と幾何級数

調和級数と幾何級数の収束性

定理1.1 調和級数

$$1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots\longrightarrow +\infty$$

定理1.2 幾何級数

$ S(a):=1+a+a^2+a^3+\cdots$ は $|a|<1$ ならば $\dfrac{1}{1-a}$ に収束し、ほかでは発散する。

これらについては説明を省略します。

オイラー・マスケローニ定数

定理1.1を少し変えると次のような収束数列を得ます。

定理1.3 オイラー・マスケローニ定数

$$\lim_{n\to\infty}\left(1+\frac{1}{2}+\cdots+\frac{1}{n}-\ln n\right)=\g\approx 0.58$$

この定数についてはこちらをどうぞ。調和級数は $\log$ と同じようなスピードで増加していくことを表しています。

交代級数

級数の項が交互に正負となっているものを「交代級数」とか「交項級数」とよびます(alternating series)。

ライプニッツの定理

定理2.1 Leibniz's test

$\{a_n\}$ が単調減少数列 かつ $a_n\to 0$ ならば、交代級数 $\sum (-1)^na_n$ は収束する。

【証明】$a_n \ge 0$ です。交代級数の定め方から\begin{eqnarray*}S_{2n+2}\le S_{2n}\quad,\quad S_{2n+1} \ge S_{2n-1}\end{eqnarray*}ですので $\{S_{2n}\}$ は単調減少、$\{S_{2n-1}\}$ は単調増加です。また\begin{eqnarray*}S_{2n} &=& S_{2n-1}+a_{2n}\ge S_{2n-1}\ge S_{2n-3}\ge \cdots \ge S_1\\S_{2n-1} &=& S_{2n-2}-a_{2n-1}\le S_{2n-2}\le S_{2n-4}\le \cdots \le S_2\end{eqnarray*}こちらの記事で示したように、有界な単調列 $\{S_{2n}\}$ , $\{S_{2n-1}\}$ はそれぞれ収束します。$S_{2n}\to\alpha$ とすると、$|S_{2n}-S_{2n-1}|=a_{2n}\to 0$ なので同記事の例題6より$S_{2n-1}\to\alpha$ となります。ゆえに $\{S_{2n}\}$ , $\{S_{2n-1}\}$ は同じ値 $\a$ に収束しますので $S_{n}\to\a$ .

例として $\ln(1+x)$ のマクローリン展開$$\ln(1+x)=\sum_{n=1}^\infty\frac{(-1)^{n-1}}{n}x^n$$で $x=1$ とすると定理2.1を満たす交代級数$$1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\cdots=\ln 2$$を得ます。これを拡張したものとして多重対数関数の特殊値$$\Li_s(-1)=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{n^s}\quad,\; (s>0)$$も値をとります。

また逆三角関数の展開式$$\arctan x=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}$$で $x=1$ として$$1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7}+\cdots=\frac{\pi}{4}$$これを拡張したディリクレのベータ関数$$\beta(s) :=\sum_{n=0}^\infty\frac{(-1)^n}{(2n+1)^s}\quad,\;(s>0)$$も収束して値をとります。

交代級数の評価についての定理

定理2.2 alternating series estimation theorem

広義単調減少の正項数列 $\{a_n\}$ について、無限級数 $\displaystyle\sum_{n=0}^\infty (-1)^na_n=S$ とその部分和 $S_n$ とする。任意の $n$ に対し$$|S-S_n|\le a_{n+1}$$

【証明】$S_{2m+1}$ は単調増加、$S_{2m}$ は単調減少より$$|S_{2m+1}-S|=S-S_{2m+1}\le S_{2m+2}-S_{2m+1}=a_{2m+2}$$$$|S_{2m}-S|=S_{2m}-S\le S_{2m}-S_{2m+1}=a_{2m+1}$$【証明終】

正項級数の収束性

正項級数とは読んで字のごとく、すべての項が $a_n\ge 0$ のものです。その和の数列 $\{S_n\}$ は必ず単調増加となりますので、$\sum a_n$ が収束することと $\{S_n\}$ が有界であることは同値です。よって収束性を判定するために、収束性が分かっている別の数列と比較します。

基本となる判定法

定理3.1 比較判定法

非負の数列 $\{a_n\}$ について、$\sum b_n$ が収束し、かつ $a_n\le b_n$ ならば $\sum a_n$ は収束する。
また $\sum c_n$ が発散正項級数であり、かつ $a_n\ge c_n$ ならば $\sum a_n$ は発散する。

例えば $e^{-n}|\sin n|\le e^{-n}$ であることから$$\sum_{n=1}^\infty e^{-n}|\sin n|\le\sum_{n=1}^\infty e^{-n}=\frac{1}{e-1}$$となり、$\sum e^{-n}|\sin n|$ は収束することが分かります。

また $\frac{1}{\sqrt{2n+99}}$ なる数列を考えるとその無限和は$$\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{\sqrt{2n+99}}\ge\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{\sqrt{99n+99}}\ge \frac{1}{\sqrt{99}}\sum_{n=0}^\infty\frac{1}{n+1}$$右辺(調和数列)は発散正項級数でしたから、$\sum\frac{1}{\sqrt{2n+99}}$ も発散します。

系3.2

非負の数列 $\{a_n\}$ について、収束正項級数 $\sum b_n$ 対して $\frac{a_{n+1}}{a_n}\le \frac{b_{n+1}}{b_n}$ ならば $\sum a_n$ は収束する。

また発散正項級数 $\sum c_n$ に対して $\frac{a_{n+1}}{a_n}\ge \frac{c_{n+1}}{c_n}$ ならば $\sum a_n$ は発散する。

【証明】条件より$$\frac{a_{n+1}}{b_{n+1}}\le\frac{a_n}{b_n}\le\cdots\le\frac{a_1}{b_1}$$$$\therefore\quad a_n\le\frac{a_1}{b_1}b_n$$ 定理3.1より$\sum a_n$ は収束。

極限比較判定法

系3.2A Limit comparison test

正項級数 $\sum a_n$ , $\sum b_n$ について$$\lim_{n\to\infty}\frac{a_n}{b_n}=L>0$$なる定数 $L$ があれば $a_n\sim b_n$ と書くことにする。$a_n\sim b_n$ であるとき、$\sum a_n$ , $\sum b_n$ はともに収束するかともに発散する。

カーレマンの不等式

系3.3 Carlemanの不等式

正項級数 $\sum_{n=1}^\infty a_n$ が収束するとき$$\sum_{n=1}^\infty\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}<e\sum_{n=1}^\infty a_n$$

【証明】正の数列 $\{c_n\}$ に対して$$\sum_{n=1}^\infty\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n} = \sum_{n=1}^\infty\frac{(c_1a_1\cdot c_2a_2\cdots c_na_n)^\frac{1}{n}}{(c_1c_2\cdots c_n)^\frac{1}{n}}$$右辺に相加・相乗平均の不等式を用いて\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^\infty\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n} &\le& \sum_{n=1}^\infty\frac{c_1a_1+c_2a_2+\cdots +c_na_n}{n(c_1c_2\cdots c_n)^\frac{1}{n}} \\&=& \sum_{n=1}^\infty\sum_{k=1}^n\frac{c_ka_k}{n(c_1c_2\cdots c_n)^\frac{1}{n}} \\&=& \sum_{n=1}^\infty\sum_{k=n}^\infty\frac{c_na_n}{k(c_1c_2\cdots c_k)^\frac{1}{k}}\end{eqnarray*}$c_n :=\dfrac{(n+1)^n}{n^{n-1}}$ とおくと$$c_1c_2\cdots c_k=(k+1)^k$$となるので\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^\infty\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n} &\le& \sum_{n=1}^\infty\sum_{k=n}^\infty\frac{c_na_n}{k(k+1)} \\&=& \sum_{n=1}^\infty \frac{(n+1)^n}{n^{n-1}}a_n\sum_{k=n}^\infty\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right) \\&=& \sum_{n=1}^\infty\left(1+\frac{1}{n}\right)^n a_n\end{eqnarray*}$e^x\ge 1+x\:\Rightarrow\: e^\frac{1}{m}\ge 1+\frac{1}{m}\:\Rightarrow\: e \ge (1+\frac{1}{m})^m$ より $$\sum_{n=1}^\infty\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_n}<e\sum_{n=1}^\infty a_n$$

コーシーの収束判定法

定理3.4 コーシーの収束判定法

$a_n>0$ , $\displaystyle\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{a_n}=\rho$ とするとき、$\sum a_n$ は $\rho<1$ ならば収束し、$\rho>1$ ならば発散する。

【証明】$\rho<1$ とすると、実数の稠密性により $\rho+\epsilon<1$ なる $\epsilon>0$ がとれる。過去記事の定理1より、$\sqrt[n]{a_n}$ の上極限 $\displaystyle\limsup_{n\to\infty}\sqrt[n]{a_n}=\rho$ に対し$$\forall\epsilon>0\;,\;\exists N\in \NN\;,\;\forall n\ge N\;,\;\sqrt[n]{a_n}<\rho+\epsilon$$である。よって $a_n<(\rho+\epsilon)^n<1$ より$$\sum_{n=1}^\infty a_n<\sum_{n=1}^\infty (\rho+\epsilon)^n=\frac{\rho+\epsilon}{1-\rho-\epsilon}<+\infty$$で収束する。

次に $\rho>1$ とすると実数の稠密性により $\rho-\epsilon>1$ なる $\epsilon>0$ がとれる。同記事の定理2より無数の $n$ に対して$$\sqrt[n]{a_n}>\rho-\epsilon>1$$すなわち $a_n>(\rho-\epsilon)^n>1$ である。この無数の $a_n$ を順に $b_1,b_2,\cdots,b_k,\cdots$ とすると$$\sum_{k=1}^\infty 1<\sum_{k=1}^\infty (\rho-\epsilon)^k<\sum_{k=1}^\infty b_k<\sum_{n=1}^\infty a_n$$よって $\sum_{n=1}^\infty a_n $ は発散する。

なお $\rho=1$ の場合は収束・発散の判定は、これだけではできません。また $a_n$ が正と限らない一般の級数でも、$a_n$ のかわりに $|a_n|$ として定理3.4を書けば同じことが成り立ちます。よってその場合、定理3.4は級数 $\sum a_n$ の絶対収束性を示しています。

ダランベールの収束判定法

定理3.5 ダランベールの収束判定法

$a_n>0$ , $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_{n+1}}{a_n}=\rho$ とするとき、$\sum a_n$ は $\rho<1$ ならば収束し、$\rho>1$ ならば発散する。

【証明】$\rho<1$ とすると、実数の稠密性により $\rho+\epsilon<1$ なる $\epsilon>0$ がとれる。条件よりその $\epsilon$ に対してある自然数 $N$ が存在し$$\forall n\ge N\quad,\quad \left|\frac{a_{n}}{a_{n-1}}-\rho\right|<\epsilon$$とできる。よって $n\ge N$ ならば$$a_n<(\rho+\epsilon)a_{n-1}<\cdots<(\rho+\epsilon)^{n-N}a_N$$$N$ , $\epsilon$ は $\rho$ に応じて定まった単なる数値であることに留意する。\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^\infty a_n &=&\sum_{n=1}^{N-1} a_n+\sum_{n=N}^\infty a_n \\&=& S_{N-1}+\sum_{n=N}^\infty a_n \\&<& S_{N-1}+\sum_{n=N}^\infty (\rho+\epsilon)^{n-N}a_N \\&=& S_{N-1}+(\rho+\epsilon)^{-N}a_N\sum_{n=N}^\infty (\rho+\epsilon)^{n} \\&=& S_{N-1}+(\rho+\epsilon)^{-N}a_N\frac{(\rho+\epsilon)^{N}}{1-\rho-\epsilon} \\&=&S_{N-1}+\frac{a_N}{1-\rho-\epsilon}<+\infty\end{eqnarray*}で収束する。

次に $\rho>1$ とすると、実数の稠密性により $\rho-\epsilon>1$ なる $\epsilon>0$ がとれる。同様の議論により、この $\epsilon$ に対し自然数 $N$ があって $n\ge N$ ならば$$a_n>(\rho-\epsilon)^{n-N}a_N$$となるので\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^\infty a_n &>& S_{N-1} + \sum_{n=N}^\infty (\rho-\epsilon)^{n-N}a_N \\&=& S_{N-1} + \frac{a_N}{(\rho-\epsilon)^N}\sum_{n=N}^\infty (\rho-\epsilon)^{n}\end{eqnarray*}よって発散。

なお $\rho=1$ の場合、収束・発散の判定はできません。また $a_n$ が正と限らない一般の級数でも、$a_n$ のかわりに $|a_n|$ として定理3.5を書けば同じことが成り立ちます。よってその場合、定理3.5は級数 $\sum a_n$ の絶対収束性を示しています。

例を見てみましょう。$e^x$ の級数表示 $\displaystyle\sum_{n=0}^\infty \dfrac{x^n}{n!}$ で $x\ge 0$ とすると$$\frac{a_{n+1}}{a_n}=\frac{x}{n+1}\to 0$$よって $x$ がどんな非負の数であっても級数は収束します。

$x\ge 0$ として、ガウスの超幾何級数 $\displaystyle\sum_{n=0}^\infty \dfrac{(a)_n(b)_n}{(c)_nn!}x^n$ の収束性を確かめましょう。$$\frac{a_{n+1}}{a_{n}}=\frac{(n+a)(n+b)}{(n+c)(n+1)}x\to x$$よって $x<1$ ならば収束します。

次回は、さらに精密な判定法を学習します。こちら:

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