無限級数の収束性3(アーベル・ディリクレ)

前回はこちら(前提知識として必要):

無限級数の収束性1(コーシー、ダランベールなど)

無限級数の収束性2(クンマーなど)

そもそもの数列の基礎はこちらから:

【ε論法】数列の収束と極限・例題 ~εとNを使って~

過去2回は正項級数の収束性を論じました。今回は次のテーマとなります。

Today's Theme

正項とは限らない一般の無限級数が収束する条件、特にコーシーの収束判定基準、アーベルの判定法、ディリクレの判定法などについて学ぶ。

Cauchy convergence criterion

直訳すると「コーシーの収束判定基準」となります。以下、本記事を通して\begin{equation}S_n:=a_1+a_2+\cdots+a_n\tag{1}\end{equation}とします。

定理1 Cauchy convergence criterion

$S_n$ が $n\to\infty$ で収束する必要十分条件は$$\forall\epsilon>0\:,\:\exists N\in\NN\:,\:\forall m,n\ge N\:,\:|S_m-S_n|<\epsilon$$

これはコーシー列の条件そのものです。数列が収束する必要十分条件は「コーシー列であること」でしたので、直ちに定理1を得ます。

例えば $a_n=\frac{1}{n^2}$ なる数列の無限和を考えましょう。$1/N<\epsilon$ となるように $N$ をとり、$m\ge n\ge N$とします。\begin{eqnarray*}|S_n-S_m|&=&\frac{1}{(n+1)^2}+\frac{1}{(n+2)^2}+\cdots+\frac{1}{m^2}\\ &<&\frac{1}{n(n+1)}+\frac{1}{(n+1)(n+2)}+\cdots+\frac{1}{(m-1)m}\\ &=& \left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right) + \left(\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2}\right)+\cdots+ \left(\frac{1}{m-1}-\frac{1}{m}\right)\\ &=& \frac{1}{n}-\frac{1}{m} < \frac{1}{n}\\&\le&\frac{1}{N}<\epsilon \end{eqnarray*}よって $S_n$ はコーシー列であり、収束します。その極限値は $\zeta(2)=\frac{\pi^2}{6}$ として知られています。

定理1はこの後も用います。

n a_n の収束性

定理2

$\sum a_n$ が収束するなら $a_n\to 0$ .

【証明】条件より、定理1から$$\forall\epsilon>0\:,\:\exists N\in\NN\:,\:\forall m,n\ge N\:,\:|S_m-S_n|<\epsilon$$ $n=m-1>N$ ととって$$|S_m-S_{m-1}|<\epsilon\Rightarrow |a_m|<\epsilon$$$$\therefore\quad \lim_{n\to\infty}a_n=0$$【証明終】

系3

$\{a_n\}$ が正項の単調減少列かつ $\sum a_n$ が収束するなら $na_n\to 0$ .

【証明】定理1より\begin{eqnarray*}&&\forall\epsilon>0\:,\:\exists N_1\in\NN\:,\:\forall m\ge N_1\:,\:|S_{2m}-S_m|<\frac{\epsilon}{4}\\&&\Rightarrow a_{m+1}+a_{m+2}+\cdots+a_{2m}<\frac{\epsilon}{4}\\&&\Rightarrow ma_{2m}<\frac{\epsilon}{4}\\&&\Rightarrow 2ma_{2m}<\frac{\epsilon}{2}\end{eqnarray*}また定理2より $a_n\to 0$ であるため、同じ $\epsilon$ に対して\begin{eqnarray*}\exists N_2\in\NN\:,\:\forall m\ge N_2\:,\:|a_{2m}|<\frac{\epsilon}{2}\end{eqnarray*}とできる。したがって $N_1,N_2$ のうち大きい方を $N$ とすると、$\forall m\ge N$ に対して$$(2m+1)a_{2m+1}\le (2m+1)a_{2m}=2ma_{2m}+a_{2m}<\frac{\epsilon}{2}+\frac{\epsilon}{2}=\epsilon$$よって$$\lim_{n\to\infty}na_n=0$$【証明終】

数列をまとめた場合

定理4

$\sum a_n$ が収束するなら、その級数の項を任意にくくってできた新たな級数 $\sum A_n$ は同じ極限値をとる。
なお、この逆は成り立たない。

例えば $(a_1+a_2)+(a_3+a_4+a_5)+a_6+(a_7+a_8)+\cdots$ と好きにまとめて、できたまとまりを前から $A_1:=a_1+a_2$ , $A_2:=a_3+a_4+a_5$ , $A_3=a_6$ , $A_4=a_7+a_8$ , という具合に 数列 $\{A_n\}$ を定義する。このとき $\sum a_n=\sum A_n$ である、という主張です。

簡単に証明しておきます。まず条件の極限値 $S$ とすると$$\forall\epsilon>0\:,\:\exists N\in\NN\:,\:\forall n\ge N\:,\:|S_n-S|<\epsilon$$ここで $A_n$ に含まれる一番最後の項を $a_k$ とすると明らかに $k\ge n\ge N$ だから $$|A_1+A_2+\cdots+A_n-S|=|a_1+a_2+\cdots+a_n+\cdots +a_k-S|<\epsilon$$$$\therefore\quad\sum_{n=1}^\infty A_n= S$$

逆は成立しません。反例として$$(1-1)+(1-1)+\cdots$$とまとめると $0$ に収束しますが、括弧をはずすと発散(振動)します。

アーベルの収束判定法

定理5

$\sum a_n$ が収束し、任意の自然数 $m$ に対して $\displaystyle\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|<K$ (すなわち有界)であれば、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。

【証明】$S_n\to S$ とする。任意の $m$ に対して\begin{eqnarray*}K &>& \sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}| \\&=& |\lambda_1-\lambda_2|+|\lambda_2-\lambda_3|+\cdots+|\lambda_m-\lambda_{m+1}| \\ &\ge& |(\lambda_1-\lambda_2)+\cdots+(\lambda_m-\lambda_{m+1})|\\ &=& |\lambda_1-\lambda_{m+1}|\end{eqnarray*}\begin{equation}\therefore\quad |\lambda_m|<|\lambda_1|+K\quad(\forall m)\tag{1}\end{equation}また条件より\begin{equation}\forall\epsilon>0\:,\:\exists N\in\NN\:,\:\forall n\ge N\:,\:|S_n-S|<\epsilon\tag{2}\end{equation}となる。
ここで $\displaystyle\sum_{n=1}^\infty \lambda_na_n$ の収束性を示すには、有限個の項を除いた $\displaystyle\sum_{n=N+1}^\infty \lambda_na_n$ を検討すれば十分である。すなわち \begin{eqnarray*}\left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n a_n\right| &=& \left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n (S_n-S_{n-1})\right| \\&=& \left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n \left[(S_n-S)-(S_{n-1}-S)\right]\right|\end{eqnarray*}総和を書き下し、$(S_k-S)$ でまとめると\begin{eqnarray*}=&&\Bigl|-\lambda_{N+1}(S_N-S)+(\lambda_{N+1}-\lambda_{N+2})(S_{N+1}-S)\\&&+(\lambda_{N+2}-\lambda_{N+3})(S_{N+2}-S)+\cdots+(\lambda_{m-1}-\lambda_{m})(S_{m-1}-S)\\&&+\lambda_m(S_m-S)\Bigr|\\\le&&|\lambda_{N+1}||S_N-S|+|\lambda_{N+1}-\lambda_{N+2}||S_{N+1}-S|\\&&+|\lambda_{N+2}-\lambda_{N+3}||S_{N+2}-S|+\cdots+|\lambda_{m-1}-\lambda_{m}||S_{m-1}-S|\\&&+|\lambda_m||S_m-S|\end{eqnarray*}(2)より\begin{eqnarray*}<\epsilon(|\lambda_{N+1}|+|\lambda_{N+1}-\lambda_{N+2}|+|\lambda_{N+2}-\lambda_{N+3}|+\cdots+|\lambda_{m-1}-\lambda_{m}|+|\lambda_m|)\end{eqnarray*}(1)および条件式から$$\left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n a_n\right|<(2|\lambda_1|+3K)\epsilon$$よって収束する。【証明終】

系6

$\sum a_n$ が収束し、$\{\lambda_n\}$ が正項かつ単調減少であれば $\sum \lambda_na_n$ は収束する。

【証明】条件より$$\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|=\lambda_1-\lambda_{m+1}<\lambda_1$$よって定理5の前提条件を満たし、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。【証明終】

次はアーベルの収束判定法といわれるものです。系6とほぼ同じです。

系7 Abel's test

$\sum a_n$ が収束し、$\{\lambda_n\}$ が単調かつ有界であれば $\sum \lambda_na_n$ は収束する。

【証明】$\{\lambda_n\}$ が単調減少なら$$\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|=\lambda_1-\lambda_{m+1}$$単調増加なら$$\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|=\lambda_{m+1}-\lambda_1$$さらに $\{\lambda_n\}$ が有界であればこれらも有界。よって定理5の前提条件を満たし、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。【証明終】

$\sum a_n$ が収束すれば $\sum\sqrt[n]{n}a_n$ および $\sum(1+\frac{1}{n})^n a_n$ は収束する。

【証明】平均値の定理より$$\frac{\ln(n+1)}{n+1}-\frac{\ln n}{n}=\frac{1-\ln\t_n}{\t_n^2}\quad(n<\t_n<n+1)$$よって $n\ge 3$ で $\sqrt[n]{n}$ は単調減少であり、過去記事で示した $\sqrt[n]{n}\to1$ と合わせれば有界だと分かり、$\sum\sqrt[n]{n}a_n$ は収束する。

次に $e^x\ge 1+x$ に $x=1/n$ を代入して両辺を $n$ 乗することで $(1+\frac{1}{n})^n\le e$ を得る。また $(1+\frac{1}{n})^n$ と $(1+\frac{1}{n+1})^{n+1}$ を二項展開して各項を比較すると単調減少であると分かる。よって $\sum(1+\frac{1}{n})^n a_n$ は収束する。【証明終】

ディリクレの収束判定法

振動する級数の利用

定理8

$\sum a_n$ は収束するとは限らないが有界であるとする。$\lambda_n\to0$ であり、任意の自然数 $m$ に対して $\displaystyle\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|<K$ (すなわち有界)であれば、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。

【証明】$\lambda_n\to0$ より$$\forall\epsilon>0\:,\:\exists N\in\NN\:,\:\forall n\ge N\:,\:|\lambda_n|<\epsilon$$すなわち $m\ge N$ として\begin{equation}|\lambda_m|<\epsilon\;,\;|\lambda_{N+1}|<\epsilon\tag{1}\end{equation}が成り立っている。また条件より\begin{equation}|S_n|<M\quad,\quad \forall n\in\NN\tag{2}\end{equation}なる定数 $M$ がとれる。

ここで $\displaystyle\sum_{n=1}^\infty \lambda_na_n$ の収束性を示すには、有限個の項を除いた $\displaystyle\sum_{n=N+1}^\infty \lambda_na_n$ を検討すれば十分である。すなわち\begin{eqnarray*}\left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n a_n\right| &=& \left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n (S_n-S_{n-1})\right|\\&=&|-\lambda_{N+1}S_N+(\lambda_{N+1}-\lambda_{N+2})S_{N+1}+\cdots+(\lambda_{m-1}-\lambda_{m})S_{m-1}+\lambda_mS_m|\end{eqnarray*}(2)を使って$$<M\Bigl(|\lambda_{N+1}|+\underbrace{\sum_{n=N+1}^{m-1}|\lambda_{n}-\lambda_{n-1}|}_{A}+|\lambda_m|\Bigr)$$条件より $\displaystyle\sum_{n=1}^\infty|\lambda_n-\lambda_{n+1}|$ は単調増加かつ有界なので収束します。そして $A$ については$$A=\sum_{n=1}^{m-1}|\lambda_{n}-\lambda_{n-1}|-\sum_{n=1}^{N}|\lambda_{n}-\lambda_{n-1}|$$と書けますが、定理1により、さきほどの $N$ を十分大きくとっていれば $A<\epsilon$ とできます。よって(1)もあわせて$$\left|\sum_{n=N+1}^m \lambda_n a_n\right|<3\epsilon$$【証明終】

このとき $a_n=(-1)^n$ とすると交代級数 $\sum (-1)^n\lambda_n$ の収束判定ができることになります。それについてはここで既出ですので割愛します。

次はディリクレの収束判定法といわれるものです。

系9 Dirichlet's test

$\sum a_n$ は収束するとは限らないが有界であるとする。単調減少列 $\{\lambda_n\}$ があって $\lambda_n\to0$ であれば、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。

【証明】条件より$$\sum_{n=1}^m|\lambda_n-\lambda_{n+1}|=\lambda_1-\lambda_{m+1}<\lambda_1$$よって定理8の前提条件を満たし、$\sum \lambda_na_n$ は収束する。【証明終】

Clausen関数(多重対数関数)

例題

$\t\neq 0,\pm 2\pi,\pm 4\pi,\cdots$ かつ $p>0$ とするとき$$\sum_{n=1}^\infty\frac{\cos n\t}{n^p}\quad,\quad\sum_{n=1}^\infty\frac{\sin n\t}{n^p}$$は収束する。

【証明】$a_n=\cos n\t$ , $\lambda_n=n^{-p}$ とおけば系9が使える。なぜならば、等比級数とオイラーの公式によって$$\sum_{k=1}^n e^{ik\t}=\frac{\sin(n+\frac{1}{2})\t-\sin\frac{\t}{2}+i(\cos\frac{\t}{2}-\cos(n+\frac{1}{2})\t)}{2\sin\frac{\t}{2}}$$実部虚部の比較により$$\sum_{k=1}^n \cos k\t=\frac{\sin(n+\frac{1}{2})\t-\sin\frac{\t}{2}}{2\sin\frac{\t}{2}}<K$$となって有界と分かるからである。$\sin n\t$ でも同様。【証明終】

本記事は下記の本を参考にしています。古いですが、演習も多く、役に立ちます。少し高額なのが難点。


微分積分学 第1巻―数学解析第一編 (數學解析 第 1編)

次回:

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