無限級数の収束性2(クンマーなど)

前回はこちら(前提知識として必要):

無限級数の収束性1(コーシー、ダランベールなど)

数列の基礎はこちらから:

【ε論法】数列の収束と極限・例題 ~εとNを使って~

前回は主に正項級数の収束判定法について、基礎的なもの(ダランベールまで)を学びました。今回はより精密な判定法をいくつか説明します。

Today's Theme

正項無限級数が収束する条件について、少し難解なクンマーの判定法、ラーベの判定法、ベルトランの判定法、ガウスの判定法を学ぶ。

本記事は下記の本を参考にしています。古いですが、演習も多く、役に立ちます。少し高額なのが難点。


微分積分学 第1巻―数学解析第一編 (數學解析 第 1編)

以下、正項級数 $\sum a_n$ に限ります。一般の級数についてはいずれ書きます。

クンマーの収束判定法(Kummer's test)

定理の導出

正項級数 $\sum a_n$ について、次が成立します。

定理1.1 Kummer's test

正の数列 $\{C_n\}$ と実数 $\rho$ が存在して$$\lim_{n\to\infty}\left(C_n\frac{a_n}{a_{n+1}}-C_{n+1}\right)=\rho$$となったとする。このとき $\rho>0$ ならば $\sum a_n$ は収束し、$\rho<0$ かつ $\sum \frac{1}{C_n}\to\infty$ならば $\sum a_n$ は発散する。

【証明】$\rho>0$ であるとする。実数の稠密性より $0<\rho-\epsilon<\rho$ なる $\epsilon>0$ が存在する。この $\epsilon$ に対して自然数 $N$ が存在し$$\forall n\ge N\quad,\quad \left|C_n\frac{a_n}{a_{n+1}}-C_{n+1}-\rho\right|<\epsilon$$とできる。変形すると$$C_n\frac{a_n}{a_{n+1}}-C_{n+1}>\rho-\epsilon\;(>0)$$より$$C_na_n-C_{n+1}a_{n+1}>(\rho-\epsilon)a_{n+1}$$$N\le n\le m-1$ でこの両辺の和をとると$$\sum_{n=N+1}^m(\rho-\epsilon)a_n<C_{N}a_{N}-C_ma_m<C_{N}a_{N}$$したがって\begin{eqnarray*}\sum_{n=1}^m a_n &=& \sum_{n=1}^N a_n+\sum_{n=N+1}^m a_n \\&<& S_{N} +\frac{C_{N}a_{N}}{\rho-\epsilon}\end{eqnarray*}よって $\sum_{n=1}^m a_n$ は 有界かつ単調増加列なので $m\to\infty$ で収束する。

一方、$\rho<0$ であるとする。実数の稠密性より $\rho<\rho+\epsilon<0$ なる $\epsilon>0$ が存在する。この $\epsilon$ に対して自然数 $N$ が存在し$$\forall n\ge N\quad,\quad \left|C_n\frac{a_n}{a_{n+1}}-C_{n+1}-\rho\right|<\epsilon$$とできる。変形すると$$C_na_n-C_{n+1}a_{n+1}<(\rho+\epsilon)a_{n+1}\;(<0)$$$$\therefore\quad C_na_n<C_{n+1}a_{n+1}\Rightarrow \frac{a_{n+1}}{a_n}>\frac{\frac{1}{C_{n+1}}}{\frac{1}{C_n}}$$この不等式は $\forall n\ge N$ で成立するため、過去記事の系3.2より $\sum \frac{1}{C_n}$ が発散するなら $\sum a_n$ も発散する。

※ 定まった自然数 $N$ に対し、第 $N$ 項までの部分和 $S_N$ は有限に決まっていますから、$\sum_{n=N}^\infty$ の収束性を調べれば、それはおのずと $\sum_{n=1}^\infty$ の収束性となります。以後もこの事実を前提として進めます。

ダランベールの収束判定法

特に $C_n=1$ とするとダランベールの収束判定法に帰着します。詳しくは過去記事をどうぞ。

系1.2 Ratio test

$a_n>0$ , $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{a_{n+1}}{a_n}=\rho$ とするとき、$\sum a_n$ は $\rho<1$ ならば収束し、$\rho>1$ ならば発散する。

ラーベの収束判定法(Raabe's test)

定理の導出

定理2.1 Raabe's test

$\rho$ が存在して$$\lim_{n\to\infty}n\left(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\right)=\rho$$となったとする。このとき $\rho>1$ ならば $\sum a_n$ は収束し、$\rho<1$ ならば $\sum a_n$ は発散する。

【証明】定理1.1で特に $C_n=n$ と選ぶと $\sum \frac{1}{n}$ は発散列となります。左辺に現れる $-1$ を右辺に移項し、$\rho+1$ を改めて $\rho$ と置きなおして定理を得ます。

具体例

系2.2 ゼータ関数

$a_n=\frac{1}{n^s}$ とする。ダランベールの収束判定法ではうまくいかないことを確認せよ。その後、ラーベの判定法により収束性を導け。

ダランベールの収束判定法では$$\frac{a_{n+1}}{a_n}=\frac{n^s}{(n+1)^s}\to 1$$となり、判定不可である。ラーベの収束判定法(定理2.1)を使うと\begin{eqnarray*}n\left(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\right) &=& n \left(\left(\frac{n+1}{n}\right)^s-1\right) \\&=& \frac{(1+\frac{1}{n})^s-1^s}{\frac{1}{n}} \\&\to& \left.(x^s)'\right|_{x=1}=s\end{eqnarray*}最後は $h=\frac{1}{n}\:,\: h\to0$ として考えた。以上より $s<1$ なら $\sum a_n$ は発散し、$s>1$ なら $\sum a_n$ は収束する。なお $s=1$ は調和級数であり、発散する。

なおこの級数はリーマンゼータ関数$$\zeta(s):=\sum_{n=1}^\infty\frac{1}{n^s}$$そのものである。

ベルトランの収束判定法(Bertrand's test)

n(logn)について

補題3.1

$s>1$ とする。正の数列$$a_n:=\frac{1}{n\ln^sn}\quad(n\ge 2)$$に対して、正項級数 $\sum a_n$ は収束する。
また $s=1$ であれば $\sum a_n$ は発散する。

【証明】$x>1$ で定義される関数 $f(x):=\dfrac{1}{x\ln^sx}$ は単調減少である。$s>1$ であれば $n\ge 2$ に対して区間 $[n,n+1]$ における面積を比較すると$$a_{n+1}=f(n+1)<\int_n^{n+1} f(x)dx$$$n=2$ から $+\infty$ まで足し算する。$$\sum_{n=3}^\infty a_n<\int_2^\infty\frac{dx}{x\ln^s x}=\frac{1}{(s-1)\ln^{s-1}2}<+\infty$$よって $\sum a_n$ は収束。
$s=1$ であれば同様に$$a_n=f(n)>\int_n^{n+1} f(x)dx$$を用いて$$\sum_{n=2}^\infty a_n>\int_2^\infty\frac{dx}{x\ln x}=\Bigl[\ln\ln x\Bigr]_2^\infty\to\infty$$よって $\sum a_n$ は発散。

定理の導出

上極限と下極限を使って表現します。

定理3.2 Bertrand's test

$a_n>0$ について$$\frac{a_n}{a_{n+1}}=1+\frac{1}{n}+\frac{\mu_n}{n\ln n}$$と書けたとする。このとき $\displaystyle\liminf_{n\to\infty}\mu_n>1$ なら $\sum a_n$ は収束し、$\displaystyle\limsup_{n\to\infty}\mu_n<1$ なら $\sum a_n$ は発散する。

※ 言い換えると、
十分大きなあらゆる $n$ で $\mu_n\ge\mu>1$ とできるとき $\sum a_n$ は収束。
十分大きなあらゆる $n$ で $\mu_n\le\mu<1$ とできるとき $\sum a_n$ は発散。

【証明】$\mu_n$ の下極限 $\mu>1$ とすると、ある自然数 $N$ が存在して、$\forall n\ge N$ で $\mu_n\ge \mu>1$ とできる。 また $n$ は $3$ 以上と考えて問題ない。

ここで $s>1$ において $c_n:=\dfrac{1}{n\ln^sn}$ とすると補題3.1より $\sum c_n$ は収束正項級数となる。また\begin{eqnarray*}\frac{c_n}{c_{n+1}} &=&\frac{n+1}{n}\left(\frac{\ln(n+1)}{\ln n}\right)^s \\&=&\left(1+\frac{1}{n}\right)\left[\frac{\ln(1+\frac{1}{n})}{\ln n}+1\right]^s\end{eqnarray*}$e^x\ge 1+x$ なる不等式に $x=\frac{1}{n}$ を代入して対数をとると $\frac{1}{n}> \ln(1+\frac{1}{n})$ となるので$$\frac{c_n}{c_{n+1}}<\left(1+\frac{1}{n}\right)\left(\frac{1}{n\ln n}+1\right)^s$$$(1+x)^s$ におけるテイラーの定理を考えると$$\frac{c_n}{c_{n+1}}<\left(1+\frac{1}{n}\right)\left[1+\frac{s}{n\ln n}+\frac{s(s-1)\t_n}{2n^2\ln^2 n}\right]$$ここで $\t_n$ は $n$ に応じて $0<\t_n<\frac{1}{n\ln n}$ となるように存在する。$n\ge 3$ を仮定していたから $\t_n< 1$ となって$$\frac{c_n}{c_{n+1}}<\left(1+\frac{1}{n}\right)\left[1+\frac{s}{n\ln n}+\frac{s(s-1)}{2n^2\ln^2 n}\right]$$展開すると\begin{eqnarray*}\frac{c_n}{c_{n+1}} &<& 1+\frac{1}{n}+\frac{s}{n\ln n}+\frac{1}{n^2}\left[\frac{s}{\ln n}+\frac{s(s-1)}{2\ln^2n}+\frac{s(s-1)}{2n\ln^2n}\right] \\&<& 1+\frac{1}{n}+\frac{s}{n\ln n}+\frac{s^2}{n^2}\end{eqnarray*}ここで $1<s<\mu$ となるよう $s$ を定める。$\frac{\ln n}{n}\to 0$ であるため、ある自然数 $N'$ よりも大なる $n$ で $\frac{\ln n}{n}<\frac{\mu-s}{s^2}$ と抑えられる。したがって $N$ , $N'$ , $3$ のいずれよりも大きな $n$ に対して$$\frac{s^2}{n}<\frac{\mu-s}{\ln n}$$変形すると$$\frac{s}{n\ln n}+\frac{s^2}{n^2}<\frac{\mu}{n\ln n}$$少し戻って代入すると$$\frac{c_n}{c_{n+1}}<1+\frac{1}{n}+\frac{\mu}{n\ln n}$$となる。$\mu_n\ge \mu>1$ だったから、条件より$$\frac{c_n}{c_{n+1}}<\frac{a_n}{a_{n+1}}$$すなわち$$\frac{a_{n+1}}{a_{n}}<\frac{c_{n+1}}{c_n}$$$\sum c_n$ は収束正項級数だったから、過去記事の系3.2より $\sum a_n$ は収束。


次に $\mu_n$ の上極限 $\mu<1$ であるとすると、ある自然数 $N$ が存在して、$\forall n\ge N$ で $\mu_n\le \mu<1$ とできる。$d_n:=\dfrac{1}{n\ln n}$ とすると補題3.1より $\sum c_n$ は発散正項級数。$x \ln x$ に対して平均値の定理より$$(n+1)\ln(n+1)-n\ln n=1+\ln\a_n\quad(n<\a_n<n+1)$$と書けるので\begin{eqnarray*}\frac{d_n}{d_{n+1}} &=&\frac{(n+1)\ln(n+1)}{n\ln n} \\&=& \frac{n\ln n+1+\ln\a_n}{n\ln n}\\ &>& \frac{n\ln n+1+\ln n}{n\ln n} \\&=&1+\frac{1}{n}+\frac{1}{n\ln n} \\&>& 1+\frac{1}{n}+\frac{\mu_n}{n\ln n} =\frac{a_n}{a_{n+1}}\end{eqnarray*}$$\therefore\quad\frac{a_{n+1}}{a_n}>\frac{d_{n+1}}{d_n}$$となり、$\sum a_n$ は発散。

ガウスの収束判定法(Gauss's test)

次の定理はラーベ判定法、ベルトラン判定法に帰着できます。

定理の導出

定理4.1 Gauss's test

$a_n>0$ について、有界数列 $|\t_n|<M$ および $\lambda>1$ を用いて$$\frac{a_n}{a_{n+1}}=1+\frac{\mu}{n}+\frac{\t_n}{n^\lambda}$$と書けたとする。このとき $\mu>1$ なら $\sum a_n$ は収束し、$\mu\le 1$ なら $\sum a_n$ は発散する。

【証明】$\mu\neq 1$ のとき、式を変形すると$$n\left(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\right)=\mu+\frac{\t_n}{n^{\lambda-1}}$$$\t_n$ が有界で $\lambda-1>0$ より右辺第2項は $0$ に収束するため$$\lim_{n\to\infty}n\left(\frac{a_n}{a_{n+1}}-1\right)=\mu$$定理2.1(ラーベの判定法)より $\sum a_n$ は $\mu>1$ なら収束、$\mu<1$ なら発散する。

$\mu=1$ のとき、条件は$$\frac{a_n}{a_{n+1}}=1+\frac{1}{n}+\frac{\t_n}{n^\lambda}$$$\lambda>1$ より $\lambda=1+s$ なる $s>0$ が存在する。つまり\begin{eqnarray*}\frac{a_n}{a_{n+1}} &=& 1+\frac{1}{n}+\frac{\t_n}{n\cdot n^s}\\&=& 1+\frac{1}{n}+\frac{1}{n\ln n}\frac{\t_n\ln n}{n^s}\end{eqnarray*}十分大きな $n$ では $\dfrac{|\t_n|\ln n}{n^s}<1$ とできるので、定理3.2(ベルトランの判定法)より $\sum a_n$ は発散する。

具体例

系4.2 超幾何級数

ガウスの超幾何級数で $x=1$ とした式$$F(a,b,c;1):=\sum_{n=0}^\infty\frac{(a)_n(b)_n}{(c)_nn!}$$の収束性を調べよ。ただし $(x)_n=x(x+1)\cdots(x+n-1)$ はポッホハマー記号である。

\begin{eqnarray*}\frac{a_n}{a_{n+1}} &=& \frac{(n+c)(n+1)}{(n+a)(n+b)} \\&=& 1+\frac{(c-a-b+1)n+c-ab}{n^2+(a+b)n+ab} \\&=& 1+\frac{c-a-b+1}{n}+\frac{\t_n}{n^2}\end{eqnarray*}ただし$$\t_n=\frac{c-ab+(c-a-b+1)(a+b+\frac{ab}{n})}{1+\frac{a+b}{n}+\frac{ab}{n^2}}$$であり、$\t_n$ は有界。よってガウスの判定法により $c-a-b>0$ なら級数は収束し、そうでなければ発散する。

次回はこちら:

無限級数の収束性3(アーベル・ディリクレ)

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