【D16】Whittakerの微分方程式

概要

Whittakerの微分方程式の解を導出する.変数変換により前回紹介したクンマーの合流型超幾何微分方程式へ帰着させる.求まった特殊解はWhittaker関数とよばれる.

本記事は,前回の記事「合流型超幾何微分方程式」と深い関わりがあります.

【D15】合流型超幾何微分方程式とフロベニウス法

ホイッテーカーの微分方程式

テーマ

\begin{equation}y^{\prime\prime}+\left(-\frac{1}{4}+\frac{\kappa}{x}-\frac{\mu^2-\frac{1}{4}}{x^2}\right)y=0\tag{1}\end{equation}

これはイギリスの数学者Edmund Taylor Whittakerに由来します.日本語のWikipediaには「ホイッテーカー」とカナ表記あります。この特殊解はホイッテーカー関数とよばれ,合流型超幾何関数(クンマーの合流型超幾何関数:前回記事)の修正バージョンにあたります.

合流型超幾何微分方程式への変形

天下り的で大変申し訳ないのですが\begin{equation}y=e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu+\frac{1}{2}}u(x)\tag{2}\end{equation}とおくと$$y'=-\frac{1}{2}e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu+\frac{1}{2}}u+\left(\mu+\frac{1}{2}\right) e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu-\frac{1}{2}}u+ e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu+\frac{1}{2}}u'$$さらに微分してやや面倒な計算を経て $$y^{\prime\prime}=e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu-\frac{1}{2}}\left[xu^{\prime\prime}+(2\mu+1-x)u'+\left(\frac{x}{4}-(\mu+\frac{1}{2})+\frac{\mu^2-\frac{1}{4}}{x}\right)u\right]$$これによって(1)を書き換えると$$xu^{\prime\prime}+(2\mu+1-x)u'+\left(\frac{x}{4}-(\mu+\frac{1}{2})+\frac{\mu^2-\frac{1}{4}}{x}\right)u+\left(-\frac{x}{4}+\kappa-\frac{\mu^2-\frac{1}{4}}{x}\right)u=0$$ $$\therefore\quad xu^{\prime\prime}+(2\mu+1-x)u'-\left(\mu+\frac{1}{2}-\kappa\right)u=0$$

よってホイッテーカーの微分方程式(1)はクンマーの合流型超幾何微分方程式へ変形されました!

\begin{equation}xu^{\prime\prime}+(2\mu+1-x)u'-\left(\mu+\frac{1}{2}-\kappa\right)u=0\tag{3}\end{equation}

特殊解を導く

詳細は過去記事

【D15】合流型超幾何微分方程式とフロベニウス法

をご覧いただきたいのですが,この「(クンマーの)合流型超幾何微分方程式」とは\begin{equation}xy^{\prime\prime}+(c-x)y'-ay=0\tag{4}\end{equation}と表され,特殊解 $M_1$ , $M_2$ は$$\begin{cases}M_1&=&{}_1F_1\left[\begin{matrix}a\\c\end{matrix}\;;x\right]\\ M_2&=&x^{1-c}\;{}_1F_1\left[\begin{matrix}a-c+1\\2-c\end{matrix}\;;x\right]\end{cases}$$

ここで$$ {}_1F_1\left[\begin{matrix}a\\c\end{matrix}\;;x\right] \equiv\sum_{n=0}^\infty\frac{(a)_n}{(c)_n}\frac{x^n}{n!}$$なおポッホハマー記号は$$(x)_n\equiv x(x+1)\cdots(x+n-1)\;,\quad (x)_0=1$$

(3)と(4)を見比べると,(3)の特殊解は$$\begin{cases}u_1&=&{}_1F_1\left[\begin{matrix}\mu+\frac{1}{2}-\kappa\\2\mu+1\end{matrix}\;;x\right]\\ u_2&=&x^{-2\mu}\;{}_1F_1\left[\begin{matrix}-\mu+\frac{1}{2}-\kappa\\-2\mu+1\end{matrix}\;;x\right]\end{cases}$$

以上から求める特殊解は $y$ と $u$ の関係式(2)により $$\begin{cases}y_1&=&e^{-\frac{x}{2}}x^{\mu+\frac{1}{2}}\;{}_1F_1\left[\begin{matrix}\mu+\frac{1}{2}-\kappa\\2\mu+1\end{matrix}\;;x\right]\\ y_2&=&e^{-\frac{x}{2}}x^{-\mu+\frac{1}{2}}\;{}_1F_1\left[\begin{matrix}-\mu+\frac{1}{2}-\kappa\\-2\mu+1\end{matrix}\;;x\right]\end{cases}$$2つの特殊解を見比べると $\mu$ の正負が異なるだけです.よってこれらの解を $\mu$ の正負で対応させて $$M_{\kappa,\mu}\;,\; M_{\kappa,-\mu} $$と書き,ホイッテーカー関数とよびます.

実際には $M_{\kappa,\mu}\;,\; M_{\kappa,-\mu} $ が独立でないことがありますが,それの対処については省略します.

次の記事:

【D17】超幾何微分方程式への変換例


常微分方程式シリーズ

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