以前、アベル・プラナの和公式(Abel-Plana summation formula)を導出しました。
公式名のもととなった人物 Niels Henrik Abel は普通「アーベル」とよばれるので、「アーベル・プラナの和公式」とするのが適切との指摘をいただきました。最近wikipediaでもこちらに変更されています。
その公式は以下で表されます。
n∑k=mf(k)=f(m)+f(n)2+∫nmf(z)dz+i∫∞0f(m+iy)−f(m−iy)−f(n+iy)+f(n−iy)e2πy−1dy
今回はこれの少し変化したバージョンをやります。
m≤n∈Z , f(z) は m≤Rz≤n で有界かつ正則とする。このとき次の式が成立する。
n−1∑k=mf(k+12)=∫nmf(x)dx+i∫∞0f(m−iy)−f(m+iy)−f(n−iy)+f(n+iy)e2πy+1dy
特に m=0 , n→∞ とするとき、limn→∞∫∞0f(n±iy)e2πy+1dy=0である場合には∞∑k=0f(k+12)=∫∞0f(x)dx+i∫∞0f(−iy)−f(iy)e2πy+1dyが成り立つ。
これに取り組んだのは、とある積分を計算するときにアベル・プラナの和公式の e2πy−1 の部分が e2πy+1 となった公式が欲しいなと思ったのがきっかけです。
導出の仕方はアベル・プラナの和公式とほとんど同じで、かつそれよりもお手軽です。では見ていきましょう。
m≤n∈Z とします。関数 f(z) は m≤Rz≤n で有界かつ正則します。さらに周回積分∮Cf(z)tanπzdzを考えます(アベル・プラナの和公式のときは cotπz でした)。積分路は下図です。

縦に長い長方形の周回 C は上半分の経路 C1 と下半分の経路 C2 の組み合わせですが、向きに注意します。{C=C2−C1C1=Γ11+Γ12+Γ13C2=Γ21+Γ22+Γ23
被積分関数は ±12,±32,±52,⋯ に1位の極をもちますので、留数により積分値を求めます。∮Cf(z)tanπzdz=2πin−1∑k=mlimz→k+12f(z)tanπz⋅(z−k−12)=2πin−1∑k=mlimz→kf(z+12)tanπ(z+1/2)⋅(z−k)=2πin−1∑k=mlimz→kf(z+12)cosπz−sinπz⋅(z−k)=−2in−1∑k=mlimz→kf(z+12)cosπzπ(z−k)sinπ(z−k)(−1)k=−2in−1∑k=mf(k+12)
したがって次のようになります。
∮Cf(z)tanπzdz=−2in−1∑k=mf(k+12)
(1)の左辺は∮Cf(z)tanπzdz=∫C2f(z)tanπzdz−∫C1f(z)tanπzdzアベル・プラナの和公式を導出したときを思い出しながら、やや技巧的な変形をしていきます。
∮Cf(z)tanπzdz=−i∫C1f(z)dz−i∫C2f(z)dz−i∫C2f(z)(itanπz−1)dz+i∫C1f(z)(itanπz+1)dz
f(z) は正則なので右辺第1,2項は経路を変形できます。∫C1f(z)dz=∫C2f(z)dz=∫nmf(x)dxしたがって
∮Cf(z)tanπzdz=−2i∫nmf(x)dx−i∫C2f(z)(itanπz−1)dz+i∫C1f(z)(itanπz+1)dz
右辺第2項について
(2)の右辺第2項は経路 C2 ですので z=x+iy と表したときに y≤0 です。よって|itanπz−1|=|eiπz−e−iπzeiπz+e−iπz−1|=2|e2iπz+1|=2|e2iπxe−2πy+1|≤2|e−2πy−1|→y→−∞0f(z) は有界だと仮定していますから|f(z)(itanπz−1)|→y→−∞0よって経路 C2 のうち Γ22 の積分値はゼロとなります。
∫C2f(z)(itanπz−1)dz=∫Γ21+∫Γ23=−i∫∞0f(m−iy)(itanπ(m−iy)−1)dy−i∫0∞f(n−iy)(itanπ(n−iy)−1)dy=i∫∞0f(m−iy)(itaniπy+1)dy+i∫0∞f(n−iy)(itaniπy+1)dy=i∫∞0(f(m−iy)−f(n−iy))(itaniπy+1)dy=2i∫∞0f(m−iy)−f(n−iy)e2πy+1dy
∴∫C2f(z)(itanπz−1)dz=2i∫∞0f(m−iy)−f(n−iy)e2πy+1dy
右辺第3項について
(2)の右辺第3項は経路 C1 ですので y≥0 です。|itanπz+1|=|eiπz−e−iπzeiπz+e−iπz+1|=2|e−2iπz+1|=2|e−2iπxe2πy+1|≤2|e2πy−1|→y→+∞0f(z) は有界だと仮定していますから|f(z)(itanπz+1)|→y→+∞0よって経路 C1 のうち Γ12 の積分値はゼロとなります。
∫C1f(z)(itanπz+1)dz=∫Γ11+∫Γ13=i∫∞0f(m+iy)(itanπ(m+iy)+1)dy+i∫0∞f(n+iy)(itanπ(n+iy)+1)dy=i∫∞0f(m+iy)(itaniπy+1)dy+i∫0∞f(n+iy)(itaniπy+1)dy=i∫∞0(f(m+iy)−f(n+iy))(itaniπy+1)dy=2i∫∞0f(m+iy)−f(n+iy)e2πy+1dy
∴∫C1f(z)(itanπz+1)dz=2i∫∞0f(m+iy)−f(n+iy)e2πy+1dy
(3)(4)を(2)へ用いると∮Cf(z)tanπzdz=−2i∫nmf(x)dx+2∫∞0f(m−iy)−f(n−iy)e2πy+1dy−2∫∞0f(m+iy)−f(n+iy)e2πy+1dy左辺を(1)によって書き換えれば求めていた公式を得ます。
n−1∑k=mf(k+12)=∫nmf(x)dx+i∫∞0f(m−iy)−f(m+iy)−f(n−iy)+f(n+iy)e2πy+1dy(5)
m=0 , n→∞ とすると∞∑k=0f(k+12)=∫∞0f(x)dx+ilimn→∞∫∞0f(−iy)−f(iy)−f(n−iy)+f(n+iy)e2πy+1dyf(z) がlimn→∞∫∞0f(n±iy)e2πy+1dy=0を満たすような関数である場合には
∞∑k=0f(k+12)=∫∞0f(x)dx+i∫∞0f(−iy)−f(iy)e2πy+1dy
これだとシンプルで応用がしやすそうですね。
f(α)=1(z+α)2とすると∞∑n=01(z+n+12)2=∫∞0dx(z+x)2+i∫∞0(z−iy)−2−(z+iy)−2e2πy+1dy左辺はディガンマ関数の微分(あるいはフルヴィッツゼータ関数)です。右辺も整理して
ψ′(z+12)=1z−4∫∞0yzdy(y2+z2)2(e2πy+1)
なる積分表示を得ます。ここ以降は
【γ19】対数ガンマ関数におけるビネの第2公式の導出(アベル・プラナの和公式,ポリガンマ関数)(ガンマ関数の基礎19)
を参考に、ビネの第2公式の類似公式を導きましょう。(7)を 1 から z まで積分するとψ(z+12)=lnz+2∫∞0ydy(y2+z2)(e2πy+1)+Cただし C は定数をまとめたものです。(8)を 1 から z まで積分してlnΓ(z+12)=lnΓ(32)+zlnz+(C−1)z+1−C+2∫∞0arctanzy−arctan1ye2πy+1=lnΓ(32)+zlnz+(C−1)z+1−C+2∫∞0arctany−arctanyze2πy+1dy最後の変形は arctanX=π2−arctan1X を考えるといいです。よって定数項を C′ とするとlnΓ(z+12)=zlnz+(C−1)z+C′−2∫∞0arctanyze2πy+1dy積分(ログガンマの剰余項にあたる)を評価します。|lnΓ(z+12)−zlnz−(C−1)z−C′|=2|∫∞0arctanyze2πy+1dy|≤2z∫∞0ydye2πy+1=96z→z→∞0最後の計算はゼータ関数の積分表示を参照。∴lnΓ(z+12)−zlnz−(C−1)z−C′→z→∞0左辺を変形します。[lnΓ(z+12)−zln(z+12)+z+12−ln2π2]+z{ln(1+12z)−C}+ln2π2−12−C′→z→∞01行目大括弧の中身はビネの第2公式の導出の際に得たlimz→∞|logΓ(z)−(z−12)logz+z−ln2π2|=0によって消えます。∴z{ln(1+12z)−C}+ln2π2−12−C′→z→∞0⇒−Cz+12ln(1+12z)2z+ln2π2−12−C′→z→∞0⇒−Cz+ln2π2−C′→z→∞0これを満たすには C=0 , C′=ln2π2 でなくてはなりません。
したがって(8)(9)式は次のようになります。
ψ(z+12)=lnz+2∫∞0ydy(y2+z2)(e2πy+1)
lnΓ(z+12)=zlnz−z+ln2π2−2∫∞0arctanyze2πy+1dy
特に z=1 なら
∫∞0arctanxe2πx+1dx=34ln2−12
アベル・プラナの和公式を応用した記事:
複素積分演習:


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Wikipediaの名称がアベルからアーベルに変更されましたのでお知らせします。ニールス・アーベルに由来するのでこちらが適切です。
ありがとうございます。記事内に補足を入れました。