本題に入る前に「コーシー列」を再確認しておきます。コーシー列は関数列ではなくて、以下のように普通の数列に関する条件です。
任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し、$$m,n\ge N\Longrightarrow |a_n-a_m|<\epsilon$$とできる。
数列の収束性は最もオーソドックスには「$|a_n-a|<\epsilon$」で示されますが、これは極限値 $a$ が分からない(予想できない)場合には難しいです。ですのでコーシー列の方法は、収束先は分からないけれど収束することを示したい場合に有効なのです。今回はコーシー列の関数列バージョンをやろうって感じです。
また関数列が一様収束するとは以下のことをいいます。
任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し、$$n\ge N\Longrightarrow |f_n(x)-f(x)|<\epsilon$$とできる。
一様収束については過去に解説しました。今回はこの「一様収束」と必要十分な条件「一様コーシー列」について見ていきたいと思います。
関数列の一様収束については
【ε論法】関数列の各点収束と一様収束関数列 $\{f_n(x)\}$ が定義域で一様コーシーであるとは、その定義域全体で以下が成り立つことです。
任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し$$m,n\ge N\Longrightarrow |f_n(x)-f_m(x)|<\epsilon$$とできる。
先ほどのコーシー列の定義と比べると $a_n$ が $f_n(x)$ に変わっているだけです。関数列の場合はすべての $x$ に対して同時に $|f_n(x)-f_m(x)|<\epsilon$ となるということです。よってコーシー列の関数列バージョンといえます。
一様コーシー列は一様収束することと同値です(後述)。ですので関数列の収束先が分からなくても一様収束することを示したいときに有効です。
関数列 ${f_n(x)}$ が一様コーシー列であるとします。すると、任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し $$m,n\ge N\Longrightarrow |f_n(x)-f_m(x)|<\frac{\epsilon}{2}$$と書けます。
これより明らかに関数列は各点収束します。というのも $x$ を任意に固定すれば、この一様コーシー列の定義は単なるコーシー列を示したものとなり、コーシー列は収束するからです。よって $\displaystyle\lim_{n\to\infty}f_n(x)=f(x)$ と書けます。$n$ は任意でしたから$$|f_n(x)-f_m(x)|<\frac{\epsilon}{2}\Rightarrow|f(x)-f_m(x)|\le\frac{\epsilon}{2}<\epsilon$$よって一様収束します。
数列の不等号について、極限をとると等号が成り立つことがあります。例えば $a_n=0$ , $b_n=1/n$ では $a_n<b_n$ ですが、極限をとると一致します。$\epsilon/2$ のところで $\le$ となっているのはそのためです。
関数列 ${f_n(x)}$ が一様収束するとします。つまり任意の $\epsilon>0$ に対してある自然数 $N$ が存在し$$n\ge N\Longrightarrow |f_n(x)-f(x)|<\frac{\epsilon}{2}$$$$m\ge N\Longrightarrow |f_m(x)-f(x)|<\frac{\epsilon}{2}$$の2式を得ます。これより任意の $m,n\ge N$ に対し\begin{eqnarray*}|f_m(x)-f_n(x)|&=&|{f_m(x)-f(x)}-{f_n(x)-f(x)}|\\&\le& |f_m(x)-f(x)|+|f_n(x)-f(x)|\\&<&\epsilon\end{eqnarray*}となるので一様コーシー列です。
以上から一様収束と一様コーシーは互いに必要十分条件であることが示せました。
$f_n(x)=\displaystyle\frac{1}{x^2+n^2}\; \; (x\in\mathbb{R})$ は一様コーシーである。
任意の $\epsilon>0$ に対し $N\epsilon>2$ となる自然数 $N$ をとります。$m,n\ge N$ ならば\begin{eqnarray*}|f_m(x)-f_n(x)|&=&\left|\frac{1}{x^2+m^2}-\frac{1}{x^2+n^2}\right|\\&<& \frac{1}{x^2+m^2} + \frac{1}{x^2+n^2}\\&\le& \frac{1}{n^2}+\frac{1}{m^2}\\&\le&\frac{1}{N^2}+\frac{1}{N^2}\\&=&\frac{2}{N^2}\\&\le&\frac{2}{N}<\epsilon\end{eqnarray*} よって一様コーシーです。
ε論法シリーズ
Please support me!
記事を気に入って下さった方、「応援してあげてもいいよ」という方がいらっしゃったら15円から可能なので支援していただければ幸いです。情報発信を継続していくため、サーバー維持費などに充てさせていただきます。
ご支援いただいた方は、こちらで確認できます。
◎ Amazonギフトの場合、
Amazonギフト券- Eメールタイプ – Amazonベーシック
より、金額は空白欄に適当に(15円から)書きこんで下さい。受取人は「mamekebiamazonあっとgmail.com」です(あっとは@に置き換えてください)。贈り主は「匿名」等でOKです。全額がクリエイターに届きます。
◎ OFUSEは登録不要で、100円から寄付できます。金額の90%がクリエイターに届きます。
OFUSEで応援を送る◎ codocは登録不要で、100円から寄付できます。金額の85%がクリエイターに届きます。
一様コーシー列は一様収束するの証明について質問です。
最後n→∞としたときに、ε/2の所の不等号に=が加わるのはなぜですか?
数列の不等式は、一般に極限で等号がつく可能性があるからです。例えばa_n=0,b_n=1/nではa_n
途中で途切れてしまいました。コメント機能に不具合があるようです。記事内に補足しておきました。